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自殺を覚悟しなくても、人生の有限性に気づくことができれば、自然が輝いて見えるのではないかと思います。ある意味これは、「死を味方にして生きる」ことと言えるかもしれません。

私自身も、年々自然の見え方が変わってきました。小学校の入学式のときに見た桜は純粋に美しく、子供の私は希望に満ちていました。今年、桜の名所である千鳥ヶ淵を散歩したときには、桜の花は散りはじめたところでした。私にも、いずれこの世との別れが来るだろうとの思いが浮かぶと、しみるような感動が湧きあがり、涙があふれてきました。

「死を味方にして生きる」と突然言われたら、意味がわからず、逆説的に感じるでしょう。

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けれど、これまでお伝えしてきたように、死を意識することでいまこのときがいずれ失われると認識し、感謝の気持ちが湧くのです。

それが、人生の第二ステージを豊かにするための大切なカギとなるだろうと、私は確信しています。

清水 研(しみず・けん)
精神科医・医学博士
1971年生まれ。金沢大学卒業後、都立荏原病院での内科研修、国立精神・神経センター武蔵病院、都立豊島病院での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者およびその家族の診療を担当する。2006年より国立がんセンター(現・国立がん研究センター)中央病院精神腫瘍科に勤務。2012年より同病院精神腫瘍科長。2020年4月より公益財団法人がん研究会有明病院腫瘍精神科部長。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。