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 ついに日本の地を踏む凶悪組織の幹部。その風貌をとらえようと、各社が固唾をのんでシャッターボタンに指をかけたその時、歩く歩道の向こうから黒スーツの男らがやってきた。

 JPドラゴン……!

 これが日本中を震撼させた凶悪犯の姿なのか……と思いきや、その姿はスラッとしていて、何だか邪気がない。

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「ひ、宏斗だ……」

 報道陣のだれからともなく、こう声があがる。そう、動く歩道から颯爽と現れたのは、野球の国際大会「プレミア12」1次リーグを終え、台湾から帰国した中日ドラゴンズの投手・髙橋宏斗(22)だったのだ。よく見ると傍らには井端弘和監督(49)の姿もあった。

中日ドラゴンズの投手・高橋宏斗

「え~俺、捕まってないんだけどな~~」

 思わぬ“刺客”の登場に、困惑する報道陣。とはいえ、これはこれで国際的に活躍する大物スター選手。本来の撮影目的ではないが、本能的にレンズを向け、シャッターを押し続けるカメラマンたち。

 一方、脇を謎の報道陣に固められた髙橋選手は、いつものマイペースを発揮する。

「え~俺、捕まってないんだけどな~~」

 ホニャホニャとした笑顔でそのまま歩道を流れていったのだった――。

 どうやら、小山の様子を捉えるためにマスコミが空港に集結しており、自分が小山と間違われシャッターを押されたのを理解していたようだ。

肝心の小山の姿は…(FNNプライムオンライン)

 前出の記者が続ける。

「結局、小山は髙橋選手の5分ほど後に、パーカーのフードをすっぽりかぶってやってきた。顔はほとんど見えず。撮れ高もあまり無いなか、この日は宏斗のまぶしい笑顔を胸に帰宅しました……」

記者が当時の状況を再現したスケッチ。物々しい雰囲気にも動じず流れ去る髙橋宏斗。21日のアメリカ戦に先発し、4回8奪三振無失点の活躍

 とんだドラゴン違いだったのである。