〈ソニー、KADOKAWA買収へ協議〉
業界に激震が走ったのは11月19日の午後。ロイター通信が報じたスクープだった。
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買収に動いた「世界のソニー」の思惑
経済部記者が解説する。
「ソニーによる買収協議が報じられた翌日、KADOKAWAは『当社株式の取得にかかる初期的意向表明を受領している』と認める声明を発表。株価は爆騰し、2日連続のストップ高となり、4465円まで上がっています。ソニーは今年度から3年間の経営企画で1兆8000億円の予算で他社の買収などを検討していました」
ソニーはすでにKADOKAWA株の2%を保有しており、同社の子会社で人気RPG「エルデンリング」を開発したフロム・ソフトウェアにも出資している。
一方のKADOKAWAは、2014年に動画投稿サイト「ニコニコ動画」などを手掛けるドワンゴ社と経営統合し、多角化を進めていた。
「出版にとどまらず、ゲームやアニメ、Webサービスなど多方面に展開。集英社原作ながらアニメ製作を手掛けた『【推しの子】』などがヒットし、今年3月期連結売上高は2581億円にのぼります」(同前)
買収に動いた「世界のソニー」の思惑はなにか。経済評論家の鈴木貴博氏が話す。
「ソニーは昔のような家電メーカーではなく、エンターテイメント事業が中核となりつつあります。しかし、IP(知的財産)創出は苦手分野。KADOKAWAのコンテンツを取り入れ、強化する狙いがあるのでは」
だが、買われる側のKADOKAWAにはあまりメリットはないという。
「独立性は無くなるし、マネジメントも厳しくなる。これまでのように自由にビジネスを展開したいのであれば、望ましい選択ではないでしょう。出版不況の中でIP創出に繋がらない出版物にはメスが入ることも覚悟しなければならない」(同前)
「ソニーならいいんじゃない?」社員たちは肯定的な雰囲気
では、社員たちの本音はどうか。中堅社員が語る。
「報道後は夏野剛社長から『伝えるべきことが生じたら伝える』とメッセージがあっただけです。上場企業である以上、買収はあるわけで『ソニーならいいんじゃない?』と肯定的な雰囲気です。買収されることに抵抗はなく、『どこに買収されるのがいいか』と雑談のタネになるくらい」