「トップを狙え」と言われても…現場には戸惑いの声も

 警察がトクリュウ捜査に本腰を入れ始めたのは、死者まで出た、ルフィを名乗る人物が率いる集団による全国での強盗事件がきっかけだった。

 SNSで募集した実行役に強盗をさせたり、甘い言葉で拠点であるフィリピンに連れ去った男女を使い特殊詐欺も手がけた。当時の露木康浩警察庁長官が大号令をかけ、フィリピン当局を動かしてグループ上層の逮捕にこぎ着けた。

「露木前長官は一貫して刑事畑を歩んできた警察官僚。刑事分野には幅広い関心を持ってきたが、任期の終わり頃には口をあければ『トクリュウ』の話ばかり。矢継ぎ早の指示に幹部も必死だった」(警察関係者)

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 思いは現職の(くすのき)芳伸長官も同様だ。今年1月末の就任会見でもトクリュウ対策を喫緊の課題とし、「違法なビジネスモデルの解体に取り組みたい」と意気込んだ。ただ、空回りの感も。

楠警察庁長官も意気込む ©時事通信社

「長官はじめ幹部連中の口癖は『トクリュウの下っ端ではなくトップを狙え』。ですが、警察や暴力団と違って明確なトップがいないのがトクリュウの特徴。現場には『トップって誰?』という戸惑いもあるようです」(同前)

 まずは固い頭をほぐすところからスタートのようだ。