『テラスハウス』に出演した木村花さんが、自死した事件から約5年。だが、フジテレビの責任を問うた裁判は遅々として進まない。さらに法廷でフジは驚くべき主張を繰り返していた。母・響子さんが明かす慟哭の闘いの記録。
◆◆◆
木村響子さんが娘の死を巡り、フジテレビを提訴
2023年7月12日、東京地方裁判所第530号法廷。
「どうしたら花を苦しみから助けることができたのか、今もずっと考え続けています。夢を持った若い人たちの、夢が搾取され、人がモノのように消費されていくような番組の作り方は、到底許せません」
法廷に立って意見陳述するのは、原告側の木村響子さん。20年5月23日『テラスハウス』に出演していた娘の木村花さんが22歳の若さで自ら死を選んだ。響子さんは、番組を制作したフジテレビと制作会社に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めた。その訴訟の第1回口頭弁論で響子さんは涙ながらに、言葉を絞り出していた。
「番組作りや、放送にかかわったすべての人に問いたいです。日本中、世界中から攻撃されたのがあなたの愛する人だったとしたら、出演を続けさせましたか。医師の診断を必要としませんでしたか。炎上は収まりつつあったのに、YouTubeや地上波で放送を続けましたか。木村花という1人の人間の人生について本気で考えてくれたことは、一度でもありましたか」
最後に裁判官に向かってこう訴え、陳述を終えた。
「裁判官の皆さん、もういまさら、何をどうしても、花がかえってくるわけではありません。せめて、花が生きることができたはずの社会になってほしいと願っています。そのためには、被告らが真摯に問題と向き合い、過ちを認め、改善することが不可欠です。(中略)愛する人の命が理不尽に奪われた時、残されたものに出来ることは、声をあげることだけです。みなさんが私たちの声に耳を傾けてくださることを心から願っています」
若者の恋愛模様を追った人気番組
『テラスハウス』シリーズは、共同生活を送る若者六人の恋愛模様を追ったリアリティ番組である。
「12年に深夜枠で放送開始。ネット上の若者の間で盛り上がり、低迷するフジにとって重要なコンテンツとなった。15年からNetflixで世界190カ国に配信され、第8シーズンまで続いていました」(文化部記者)
花さんはプロレスラーだった響子さんの影響を受け同じ道を歩んでいた。彼女がオーディションを受け出演したのが、『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』だった。