日本最高位の研究・教育機関である東京大学。象牙の塔に棲む医学部教授には、裏の顔があった。男が「産学連携」を楯に求め続けたのは高級な食事、銀座のホステス、そして――共同研究者が覚悟を決め、実名で告発する。
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天下の東大教授が、異様な“エロ接待”
東京・丸の内の高級グランメゾン「A」の個室で、スーツ姿の男性3人が“密談”していた。
「貴方くらいの規模のところと、共同研究するには……」
運ばれてくるフレンチを横目に、上座の2人が饒舌に語る。東京大学大学院・医学系研究科の皮膚科学教授・佐藤伸一氏(61)と、特任准教授の吉崎歩氏(45)だ。他方、手前で相槌を打つのは、一般社団法人「日本化粧品協会」の代表理事を務める引地功一氏(51)である。2023年2月14日の夜のことだった。
同年4月1日から、この協会と、佐藤教授らが所属する東大との間で、3年間にわたって共同研究する講座の設置が内定。この日は初の食事会だったという。引地氏が語る。
「店を指定され、グレードの高さに驚きました」
宴もたけなわ、店員が持ってきた会計は、3人で約15万6000円だ。
「誰も手に取ろうとしないので、思わず僕が手を伸ばすと、即座に『あら、いいんですか』と言われ、そのまま全額僕がお支払いしました」
今回、週刊文春に「実名告発」を決意したのがこの引地氏だ。こう言葉を継ぐ。
「この夜から、すべてが始まったんです。僕にとって苦悩の日々が」
引地氏による証言とそれに符合する大量の資料が明かすのは、天下の東大教授が、異様な“エロ接待”に溺れる姿だった――。
民間側が研究費用を全て負担
この“事件”の舞台は、日本最高位の教育・研究機関である東大が設ける、民間企業などとの共同研究の仕組み「社会連携講座」だ。
この制度、東大側は資金確保につながる。人件費をはじめ研究の経費を事前に定めて民間側が全て負担し、更に一律30%を「間接経費」として東大に納入する。
一方、民間側は、大きな費用負担と引き換えに、研究から生じた知的財産権について東大と交渉するなどした上で、成果を自社の商品開発などに生かすことができる。グーグルやソニーといった名だたる企業も講座を設置している。