2025年4月10日、西武鉄道は新型車両「8000系」を報道公開した。5月末頃から国分寺線で投入する予定だ。
この車両、西武鉄道にとっては「新型」だけれども、実は小田急電鉄の移籍車両である。「西武鉄道が小田急電鉄の中古車を導入する」として話題になったが、実車を見れば入念に整備されており、西武電鉄の仕様に改められている。小田急の素材を使った西武鉄道の新車だ。
小田急から来た“花嫁”を着飾らせた西武
第一印象としては「小田急らしさ」も残したように見える。例えば白い車体だ。小田急8000形は白地に青帯。対する西武8000系は、白地に青と緑のグラデーションで市松模様を作っている。小田急色を残して飾り帯を変えただけのように見えて、実はこの白は小田急の白ではない。西武鉄道の白に塗り替えられている。
小田急の車体は「ケープアイボリー」といって、少し黄色みがある。アイボリーは象牙に由来する色だ。ケープアイボリーに青帯は1969年から採用した通勤型車両のシンボルカラーだ。1987年にステンレス車体の1000形が登場して以降は銀色車体に青帯となった。8000形は往年の小田急色を残した最後の形式として、小田急ファンに人気がある。
そのケープアイボリーを、西武鉄道は白に塗り変えた。飯能と西武秩父を結ぶ4000系と同じ白だ。西武ライオンズを象徴する「白地に青と赤と緑」の白である。西武鉄道の通勤車両は1969年以降に黄色の車体が標準となり、1988年の4000系から白が基調となる。現在はステンレス車体が中心だけれども、先頭車運転席付近に白を残す。
古風な言い方になるかもしれないけれど、西武鉄道は小田急生まれの“花嫁”を迎えるに当たり、西武カラーの「無垢の白」に塗り替えたわけだ。そのうえ西武鉄道のシンボルである青と緑で着飾った。「新しい着物をあつらえて、これからも大切にしますよ」というメッセージといえそうだ。