「業務の延長線上」で起きた「性暴力による重大な人権侵害」。第三者委員会が認定した中居と編成幹部A氏の罪とはいかなるものか。そしてフジテレビの行方は――。週刊文春4月10日号が報じた内容を抜粋してお届けする。(全2回の後編/最初から読む)
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A氏をよく知る制作スタッフが語った
「僕たちの場合、数十万円の経費は前もって上長の稟議を通さないと経費計上できない。それなのにA氏は稟議を通さず計上している。彼のやり方を見ていると、上長の許可を得るのが馬鹿馬鹿しくなってしまう」
また、第三者委はA氏の「置き去り」の常習性を炙り出す証言を得ている。ある日、A氏は、フジの番組には欠かせない番組出演者との飲み会に女性社員を勧誘。深夜、女性がトイレに行っている間に脱出し、初対面の番組出演者と2人になる状況を作り出し、「置き去り」にしたという。
下ネタ、身体を触る、キス
さらにA氏は証拠隠滅まで図っている。第三者委の調査によれば、小誌報道後の25年1月9日から2月1日にかけて、A氏は前出の大物タレント、中居、弁護士との325件のメールなどを削除していたのである。
第三者委はA氏自身による「類似事案」も指摘している。20年頃、後輩の女性社員を食事に誘い、身体を触り、キスをしようとするなどのセクハラ行為を行ったと認定。また、23年には、後輩の女性社員から仕事の相談を受けたことをきっかけに食事に誘い、食事中には下ネタの会話を展開し、身体を触る、キスをするなどのセクハラ行為を行ったという。
いずれのケースについてもA氏は第三者委にセクハラ行為を概ね認めているが、今年2月、小誌の取材には事実関係を否定し、悪びれもせず、こんなことまで口にしていた。
「彼女(23年の被害者)は日頃から下ネタが好きというか。みんなから反感を買っていたぐらいの感じだったんですよ」
フジの迷走
調査結果が公表される4日前の3月27日。フジと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は、40年近くグループを率いてきた“フジの天皇”日枝久取締役相談役の退任を発表した。だが、その裏ではフジの迷走を表す出来事が起こっていた。
「1月28日、清水賢治氏が社長に就任してからHDに外部のプロ経営者を招聘する動きがありました。白羽の矢が立ったのは、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏。一時期、フジ上層部は真剣に検討したものの、最終的に断念しています」(前出・フジ幹部)