東大、経産省、マイクロソフトを経て8年前に知事となった大井川和彦氏。改革を掲げ、工場の誘致件数は日本一になるが、その陰で心を病み休職する職員が115人と過去最高に――。ここでは週刊文春3月20日号より一部抜粋。“パワハラ疑惑”の大井川知事を直撃した。(全2回の後編/前編を読む)
◆◆◆
職員にもパワハラまがいの恫喝を繰り返す
〈このような極端な発想をする知事が県政を動かしていると思うと県民が気の毒です。職員にもパワハラまがいの恫喝をしております。一刻も早く退陣されることを望みます。 ある茨城県職員より〉
19年頃に県議らに届いた告発文書はこんな書き出しではじまる。主要施策の計画に関する議事録が8ページにわたって記載され、その中に知事の発言が並ぶ。
「兼業農家は潰していい」
例えば19年10月16日、知事と農林水産部幹部職員のやり取り。「儲かる農業」を目指すための施策を、職員が説明。大井川は乱暴な物言いで「極端な発想」を展開していた。
知事「専業農家と兼業農家の数はどんな感じなの?」
職員「兼業農家が8割程度」
知事「そんな奴ら(兼業農家)にいくら政策上の資源を突っ込んでもしょうがないじゃん。やめようよそんな奴らに対する援助。一切」
大井川流の「選択と集中」なのだろうか。告発文に載る、別の会議でも「兼業農家は潰していい」と切り捨て、「リッチでプライベートジェットでアメリカの取引先に行く」ような大規模農家を育てたいと言い放つ。さらに会議の途中、大井川は厳しい宿題を課していた。
「割合として、主業でやってる農家の比率を8割にする。そういうKPIにしよう」
「KPI」とは、「重要達成度指標」なるもので、目標までの進捗具合を数値化したものだ。
「知事は数値目標を“絶対達成しろ”というスタンス。最近では知事が『女性管理職を20%増やす』とぶち上げ、今は無理やり増やしている状況です」(職員)
「バカ」「死ね」「出ていけ」
大井川は異論を一切認めない。自分の意に沿わない意見を述べる職員に対して次のような暴言を吐くことがあったという。
「バカ」「死ね」「出ていけ」
「お前の顔は見たくない」
「(女性部長に対して)このアマが」
ある時は持っているタブレットを放り投げることもあったとの証言もある。
「幹部である課長級職員ですら、基本『お前』呼ばわりですから。終始高圧的な態度で詰問し、怒りだしたら聞く耳を持たない。知事の不興を買って知事室を出禁にされた職員が複数います」(県職員)