親方の教え「つまらんことが楽しくなれば強くなれる」

 茨城県阿見町にある二所ノ関部屋には充実したトレーニング機器が完備されているが、師匠の二所ノ関親方も、四股、摺り足、鉄砲といった相撲の基本動作の大切さを大の里に繰り返し説いてきたという。大の里は昨年、「週刊文春」のインタビューにこう答えている。

「基礎基本が全て。親方の教えで印象的なのが、『つまらんことが楽しくなれば強くなれる』という言葉です。自分はまだキツイですが、楽しくなってくればおのずと“上”は見えてくると思います」

 こうして大の里が到達した横綱は、崖っぷちの地位でもある。番付の降格がない代わり、常に最高の結果を求められ、果たせなくなれば、土俵を去らなければならない。相撲界には「負けて覚える相撲かな」という格言が存在するが、貴乃花はこう断言する。

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「負けて未熟さを知ることはあっても、覚える相撲などありません。負けて何かを得るより、勝って自分の相撲を高めていくことの方が重要です。ましてや、横綱の勝ち越しラインは12勝以上。そのうえで毎場所優勝を目指していかなければなりません。15日間を負けずに闘い抜く、強固な意識が必要です」

 大の里は石川県津幡町生まれ。県内出身の横綱誕生は、初代貴ノ花とも親しかった輪島(故人)以来、52年ぶりとなる。

「日体大卒の大の里は同郷で日大卒の輪島に次ぎ、史上2人目の大卒横綱でもある。大の里は、大卒力士はまず横綱になれないという長年のジンクスも打破しました」(前出・記者)