「大の里関は、石川県の夢と希望」
今年4月、大の里は春巡業で地元の津幡町と輪島を生んだ七尾市を訪れ、昨年の能登半島地震と能登豪雨から復興の道半ばにある郷里のファンを歓喜させた。
「津幡町の知り合いが、昔から『相撲をやっとる中村くん(大の里)という子がおって、将来、必ず大物になるわ』と言うとったんです。その通りでした」
声を弾ませるのは、輪島と遠縁にあたる七尾市議の瀬戸三代氏(69)だ。
「大の里関は、地震で最も大きな被害を受けた石川県の夢と希望です。彼の活躍にどれだけ救われてきたことか。お年寄りから、それまで相撲に興味がなかった若い人たちまで、みんな大の里に夢中です。輪島関は郷土のスーパースターでしたが、大の里関には輪島関を超える英雄になってほしいと思います」(同前)
瀬戸氏は輪島を「しのぶ会」の事務局長も務める。
「輪島関が生まれた石崎町や隣の和倉町も地震で深く傷つきました。いま、復興のシンボル、新たな観光資源として、和倉温泉に輪島関の銅像をこしらえる計画を立てています。実現したら、横綱・大の里関にもぜひ来ていただきたい」(同前)
これまで何度も故郷や被災地への思いを口にしてきた大の里。貴乃花が最後にあらためて激励する。
「土俵の神様を信じ、己と闘い抜き、真の王者になってほしい。ただ、自分のためだけに土俵に上がってはいけません。生まれてきたことに感謝し、ご両親、故郷やご先祖、そして師匠への恩を胸に抱いて死力を尽くす。大の里には、そんな日本が誇れる日下開山(横綱の別称)を志してほしいと願っています」
