斎藤純容疑者(31)が中学生の頃、慕っていた兄が交通事故で命を落とす。斎藤容疑者は友人らに対し、憎悪を滲ませてこう言い放った。

 

「輸血をすれば助かったかもしれない。両親は兄貴の命より、エホバの教えを優先したんだ」(全3回の2回目/最初から読む

父親と喧嘩の末に自傷したこともあったという斎藤容疑者(知人提供)

 1994年3月、斎藤は一家の次男として生を受ける。両親と兄弟の4人家族は、さいたま市内の緑豊かな住宅街の分譲マンションで穏やかに暮らしていた。地元の知人が語る。

「優しいご両親で、夕飯をご馳走になったこともあります。ご両親は近くで飲食店を経営していて、地元では知る人ぞ知る人気店。とてもあたたかい家庭でしたよ」

斎藤容疑者は“宗教3世”だった

 だが、斎藤は家族に対して複雑な感情を抱いていたという。10代からの斎藤の親友であるA氏が語る。

ADVERTISEMENT

「母方の祖父母と母が、輸血を禁じる新興宗教『エホバの証人』の熱心な信者で、純はいわゆる“宗教3世”として育てられました。思春期男子なら珍しくないと思うのですが、彼はナイフとか武器とかが大好きな少年だった。

 ナイフは凶器であり、血を想起させるもの。でも家では『血を避けなさい』の教義が絶対。『心の中にナイフが好きな自分と、それを許せない自分がいて、混乱する』などと悩んでいました」

自室室内にあった解体器具(A氏提供)

 中学時代、その混乱が引き金となったのか、斎藤は異様な行動に出る。

「お金の貸し借りを巡る些細な喧嘩がヒートアップして、同級生の首を安物のナイフで刺したことがありました。幸い大事には至りませんでしたが、今にして思えば、抑圧された好奇心の反動だったのかもしれません」(同前)

 同じ頃、斎藤の“エホバへの憎しみ”を決定づけるある出来事が起こる。