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お金になる喋り方

柳田 「本物の芸」というものは、実際の生活の中で、多くの経験を重ねていくことで磨かれてくるのではないかと私は思うのです。経験が豊富な内海さんの喋るお話には「真実」があり、「本物の芸」となる。だから多くの人が「面白い」と腹を抱えて笑うのでしょう。

内海 そうそう。喋り芸も、ただ喋ればいいわけじゃないのよ。お金になる喋り方ってあるのです。

柳田 かつて、内海さんがツイッターに投稿した次の“時評”とも言える一文。実に核心を突いていて面白い。〈「しゅくしゅく」という言葉が大臣の口から沢山使われているけど、やっていることを見るととても「おごそかに」という意味には思えません。記者さんもボケていないで突っ込みなさいよ。それは「コソコソとやる」という意味ですかって〉。素晴らしい。「これこそ“本物の笑い”だ」と、私は笑いました。

内海 こういう時事ネタは、真面目に言っても、面白くないの。「何あのババア」って思われるだけですから。そこが難しいんですよ。

「日本酒の樽」が健康の秘訣!?

柳田 そういう言葉が90歳を超えても頭の中で回転し続けているのは、本当にすごいことです。きっとそれが元気の源なのでしょうね。

 からだの面で、健康のために心がけていることはあるんでしょうか。

内海 毎朝、家の前の道に立っている電柱と電柱の間を2往復、腰を左右に振る「モンローウォーク」で歩いていましたが、去年、左足付け根の骨を折ってしまってからはお休み中です。不甲斐ないんですが、今は杖がないと歩けないのです。でも、薬は絶対に飲みませんよ。ちょっと痛いくらいでは、全然気にしないことにしているんです。薬は飲まないけど、お酒は毎日、夕食の時に飲みます。家に、日本酒の樽があるんです。夫がそこから一杯注いでくれるんだけど、それだけで終わりです。おかわりはくれないから。

24歳下の夫、成田常也さんと内海さん ©文藝春秋

柳田 樽で置いてあるなんて、すごいですね(笑)。お酒と人間の関係には2種類ある、というのが私の持論です。お酒を飲んで早死にする人と、お酒を飲んでいるのに100歳まで生きる人。多分、肝臓の機能が違うのでしょう。内海さんは、完全に後者ですよ。

 ですが、内海さんが健康でいる最大の要因は、やはり「笑うこと」ではないかと私は思っているんです。

生きがいと笑いがあれば

内海 昔から諺でよく言いますよね。「笑う門には福来(きた)る」って。それのことですか?

柳田 まさにそうなんです。半世紀前、アメリカのある雑誌の編集長でノーマン・カズンズさんという人がいました。彼は膠原病という難病に罹り、医師から「この病は治る確率が500分の1」と言われてしまいます。そこでカズンズさんは友人から借りたお笑い番組を毎日観て、ゲラゲラ笑うことにした。そうしたら、その難病が治ってしまいました。それ以降、「笑い療法医学会」までできました。笑いは、身体を非常に活性化させるんです。

 笑うだけで長生きするとは限りませんが、内海さんのように人生を通じて打ち込めるものがある人に「笑い」がプラスされると、それを本人が自覚していなくとも、長生きに繋がる生き方になるのだろう、と私は考えています。

内海 そうかもしれませんね。今日は本当に勉強になりました。実はここに来る前、以前航空会社に勤めていた夫から「(柳田氏は)おっかない偉い先生だから」と脅かされていたけど、そんなことなくて良かったな(笑)。先生のおかげで、漫才じゃない、真面目な話が沢山できました。