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「糖質制限で老化する」は本当か

衝撃の研究結果を徹底検証する

2018/08/24

通常食に比べて30%も老化が進む? 

 そんな糖質制限で老化が進み、寿命が縮むというのは本当なのか。

「週刊新潮」の主張の根拠の一つとなっているのが、東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授が行った動物実験の結果だ。それによると、通常食を与えられたマウスは長生きしたが、糖質制限食のマウスは平均寿命より20〜25%短命だった。さらに、老化の進度にも顕著な差があり、糖質制限食の個体は背骨の曲がりや脱毛などがひどく、通常食に比べて30%も老化が進んだという。

 どうしてこのような実験をしたのか。都築准教授に話を聞いた。

「私は10年以上前から日本人の食について研究しているのですが、むかしの平均的な食事と欧米化が進んだ現代的な食事を食べ比べる実験をすると、マウスでもヒトでも1975年頃の日本人が食べていた和食が最も健康にいいという結果になったのです。その頃の和食を食べると内臓脂肪が減って体形がスリムになり、悪玉コレステロールやヘモグロビンA1cが低下、炎症指標の値(CRP)も改善します。健康にマイナスの結果が一つも出ないのです。その当時、日本人は魚、豆腐など動物性以外のたんぱく質を多く摂り、野菜、海藻、キノコなど具材がたくさん入ったみそ汁などと一緒に、総エネルギーの70%にもなる山盛りのごはんを食べていました。それなのに糖尿病になる人は、今より少なかった。ところが、現代では糖質は健康に悪いとされ、摂取量も50%ほどに減っています。そこで本当に糖質はよくないのか、まずはマウスで確かめてみようと思ったんです」

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脱毛が進み、背骨が曲がり始めたマウス

 その結果、糖質制限のエサを食べたマウスは確かに内臓脂肪が落ちて体重が減り、ヘモグロビンA1cも上がらなかった。しかし、ヒトだと60歳に相当する月齢の頃から毛づやが悪くなって脱毛が進み、背骨が曲がり始めた。80歳にあたる月齢になると通常食のマウスに比べて老化の進み具合で大きく差がつき、糖質制限のマウスはどんどん死んでいったという。その理由を都築准教授は次のように考察している。

「糖質を減らすとたんぱく質や脂質の割合が増えます。摂取したたんぱく質はアミノ酸に分解され、筋肉などに再合成されますが、実は一定の割合で不良品のたんぱく質ができ、それが溜まると老化を促進するのです。若いうちは筋肉の代謝が盛んで不良品が出にくく、それを分解する『オートファジー』と呼ばれる能力も高いのですが、年を取ると不良品が増え、分解能も落ちます。とくにアミノ酸の摂取が多いとオートファジーが抑制され、不良品のたんぱく質がたまりやすいことがわかっています。私はこのメカニズムは人間でも当てはまるのではないかと考えています。糖質制限を否定しているわけではないのですが、高齢になると血糖値が高いことよりも、低栄養のほうが問題となります。壮年期は肥満や糖尿病予防のために糖質を減らしていいと思いますが、高齢者はむしろ炭水化物(エネルギー)をたくさん摂ったほうがいいのではないでしょうか」