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「糖質制限で老化する」は本当か

衝撃の研究結果を徹底検証する

2018/08/24

炭水化物の摂取量が多いほど死亡リスクが高かった

 山田医師が指摘する通り、昨年8月、糖質制限派を勢いづかせる研究成果が報告された。

 世界的に権威のある医学誌「ランセット」のオンライン版に、「炭水化物の摂取量が多いほど死亡リスクが高かった」と報告されたのだ。この研究は5大陸18ヵ国の35歳〜70歳の13万5335人を登録し、2013年3月末までに中央値で7.4年間追跡した大規模なコホート研究だ。

 それによると、炭水化物摂取量の多さは総死亡率の高さと関連しており、摂取量が最も多いグループは最も低いグループに比べ1.28倍リスクが高かった。炭水化物の摂取量と心血管病の発症および死亡リスクとは関係していなかった。

 一方で、総脂肪(脂肪全体)および脂肪の種類別の摂取量は総死亡率の低さと関連していた。とくに飽和脂肪酸(動物性の油脂に多い)の摂取が高いほど、脳卒中のリスクが低かった。総脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(植物性や魚の油脂に多い)の摂取量は、心筋梗塞あるいは心血管病死亡とは関連がなかった。

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 つまり、この結果に基づくと、糖質制限をしても心筋梗塞や脳卒中などのリスクが上がるわけではなく、しかも肉、魚、植物性に関わらず、脂肪の摂り過ぎを心配する必要はないということになるのだ。

脂肪を悪玉とするのは間違い

 研究について、江部医師は次のように評価する。

「この結果に驚いた人もいるかもしれません。ですが、脂肪を悪玉とする説は世界的にすでに否定されています。たとえば米国で5万人の女性のうち、半分を通常の食事、半分を脂肪の少ない食事にしてもらって、8年間の経過を追った研究がありますが、どちらも心血管病になった人の割合は変りませんでした。

 また、脂肪に含まれるコレステロールをたくさん摂っても、血中のコレステロールが増えるわけではないことが明らかになり、2015年以降、米国の栄養療法の指針や日本の食事摂取基準でもコレステロールの摂取基準は撤廃されています。

 体に脂肪がつくのは、炭水化物の摂り過ぎが主な原因なのです。血糖値が上がるとインスリンが分泌されて、血中のブドウ糖を筋肉内に取り込みます。そのうちの余ったブドウ糖が中性脂肪に変えられて、体脂肪として蓄えられるのです。また、動脈硬化は脂肪ではなく、高血糖が続いて血管が傷つくのが原因です。そこにコレステロールが溜まるのは傷を修復しようとした結果であり、コレステロールの多いことが動脈硬化の原因ではありません」

 つまり、糖質制限推進派の医師たちの主張を信じるならば、糖質制限で老化が進み、寿命が縮むのはあり得ないことになる。むしろ糖質を控えたほうが心血管病のリスクが下がり、寿命は延びるというのだ。「週刊新潮」と「糖質制限推進派」のどちらを信じたらいいのか。