文春オンライン

連載この鉄道がすごい

「スーパーひたち」をリニューアル 「伊豆クレイル」が女性をターゲットにする理由

アンノン族よ、列車旅に戻ってきて

2018/09/23
note

 小田原駅のプラットホームで観光列車「伊豆クレイル」を待ち構えていたら、小田原城の下あたりからひょっこりと現れた。

小田原城の下からひょっこり

景色のよい区間で徐行や停車サービスがある

 レールと架線が張り巡らされて殺風景な駅構内で、白地にピンクの車体は「掃き溜めに鶴」という感じ。いや、掃き溜めとは失礼だ。私は駅構内の、ごちゃっとした風景が好きだ。しかも「伊豆クレイル」の優美な姿が際立つ。

ピンクゴールドの塗装は鉄道界を見渡しても珍しい

 伊豆クレイルはJR東日本が2016年から運行している観光列車だ。土日と祝日に小田原~伊豆急下田間を1往復する。景色のよい区間で徐行や停車サービスがあるため、所要時間は約2時間半だ。

ADVERTISEMENT

下田といえば、ペリー来航の地としても有名

 もっと長く乗っていたいと思うけれども、東京発にしなかった理由は3つあるという。「より景色の良い区間だけを走らせる」「国府津の車両基地で整備する」「東海道新幹線に接続して、東海・近畿からのお客様にも乗っていただきたい」だ。小田急電鉄沿線の人々や、箱根登山鉄道からの観光客も視野に入れているかも。

駅ではないところに停まるサービス

 たしかに、東海道本線の小田原から西側の景色は良い。隣の早川駅を通過し、根府川駅付近は海に面した高台を走る。初日の出の名所としても有名だし、東京行きの寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」に乗るとこの辺りで朝日の洗礼を受ける。海に反射した太陽のきらめきがまぶしい。下り「伊豆クレイル」は小田原駅を11時40分に発車して、この辺りで徐行運転してくれる。青く明るい海を眺められる。上り列車は日没前後になってしまうから、急いで通過してしまう。

 

 熱海駅から乗車するお客様も多い。熱海は近年、街ぐるみのリニューアルが功を奏して盛り上がっていると聞く。JR東日本の目論み通り、新幹線でいらっしゃるお客様もいるようで、賑やかな関西弁も聞こえてくる。下り「伊豆クレイル」は熱海駅からJR伊東線へ進み、伊東駅からさらに伊豆急行線に乗り入れる。東京・新宿方面からの特急「踊り子」と同じコースだ。2017年からは横浜発着の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」も走っていて、伊豆方面はとても盛り上がっている。途中の駅でほかの列車とすれ違うと嬉しい。

 下り「伊豆クレイル」は伊豆熱川を過ぎてしばらく走ると、駅ではない場所で停車する。海の展望を楽しんでいただこうというサービスだ。この地点は上り「伊豆クレイル」も停車する。列車の本業は走ること。しかし停車がサービスになるとは逆転の発想だ。車窓から太平洋をゆったりと眺められる。まるで動く展望室だ。