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連載近田春夫の考えるヒット

YOSHIKIの絶対に期待を裏切らぬ姿勢に学ぶ――近田春夫の考えるヒット

2018/10/24

『Red Swan』(YOSHIKI feat. HYDE)/『YOU & I』(DOBERMAN INFINITY)

絵=安斎 肇

 普通、映画に於いては、よしそれが超名曲であれ、構造的に音楽はどこまで行こうと結局、画(え)に付帯するポジションを余儀なくされる。

 そうした関係のゆえ、主題歌や挿入歌が最終的に本編以上の存在感を発揮するのは、一般的にいってやはり難しいことといわざるを得ない。ひらったく申せば「その曲はよく知っているが、それが何かの映画のサントラだったとは知らなんだ!」ということは、存外に多くはないのである。

 一応思いつくままにそんな稀な例を挙げるなら『星に願いを(ピノキオ)』に『モア(世界残酷物語)』? 和物では『旅の夜風(愛染かつら)』といったところか。ま、これはあくまで私見ではありますが……。

『Red Swan』は大人気アニメ『進撃の巨人』のテーマにして、またビジュアル系巨人二人のコラボレーションという話題もあり、それこそチャートを——資料によれば国内はもとより海外にても——快進撃中の楽曲であるが、果たしてこれが述べてきたような意味合いで、主体を凌駕するような作品として歴史にその名を刻むこととなるのか?

Red Swan/YOSHIKI feat. HYDE(ポニーキャニオン)TVアニメ『進撃の巨人』第3期テーマ。iTunes配信で世界14カ国で1位獲得。

 そこはさすがにもうすこし先の時代にならないとなんともわからない。考えても始まらないので、とにかくどんな感じの曲なのか。とりあえず聴いてみることにした。

 詞曲/プロデュースの担当がYOSHIKIとのことなので、きっとこんな感じに違いないと想像していたのが、ピアノを強調した、かなりオーバーな調子のスローものだったのだが、曲が始まった途端、まさに堂々そういう世界が眼前に広がっていった。本当にこのいちいち期待を絶対に裏切らない(超わかり易い)姿勢が、この人の今日の地位を築いたのだよなぁと……。真面目な話、勉強をさせられた格好ではあったが、半面このサウンド、ちょっとベタ過ぎな気のしないでもない。正直いえば、やはり新鮮味には欠ける作りなのである。ま、ただそれこそが冒頭の話ではないが、制作側から強く望まれた条件だったのやもしれぬが。

 それにしても今回の録音に思うのが、ピアノ演奏家としてのYOSHIKIの腕前のことである。イントロからエンディングまで、タイム感といい、フォルテピアノのダイナミズムといい、流麗な指さばきが眼に浮かぶような豊かなプレイが途切れることなく続く。最初は、その一箇所として非の打ち所というもののない完璧過ぎる演奏に、丁寧な丁寧な打ち込みかとも思ったのだけれど、クレジットを見てあらためて本気でたまげた次第である。

 ところで。YOSHIKIといえば今回のようなオーセンティックな、クラシック然とした奏法のイメージが強いが、例えばブギウギやジャズやフュージョンなどではどんな弾き方するんだろう? ちょっとそんなセッションも聴いてみたいなと思ったのである。

YOU & I/DOBERMAN INFINITY(LDH)2014年結成のラッパー集団。同グループ8枚目のシングル。11月に初の単独武道館公演を予定。

 DOBERMAN INFINITY。

 ある種完成度の高い作品ではあると思うが、若干面白味や意外性には欠けるのかも。

今週の超超宣伝中「かねて告知しておりましたオレの38年ぶりソロアルバム『超冗談だから』。10月31日の発売日にHMV渋谷店にてインストアイベントをやります。アルバム制作の経緯や舞台裏のトークを織り交ぜつつ、サインなどもいたしたいと思っております」と近田春夫氏。「20時から。歌は歌わないけれど、何卒よろしくお願いします!」

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