文春オンライン

連載文春図書館 ベストセラー解剖

昭和史は大切なことがすべて詰まった“最大の教科書”だ

『昭和の怪物 七つの謎』(保阪正康 著)――ベストセラー解剖

2018/10/31
note
『昭和の怪物 七つの謎』(保阪正康 著)

 昭和史研究の第一人者である著者が、『サンデー毎日』(毎日新聞出版)で連載した文章を、「昭和の怪物」というテーマに沿って整理し、まとめた新書が好調だ。

「著者は以前、弊社から『昭和史 七つの謎』という本をお出しになっていて、ロングセラーになっています。本書のタイトルはそれにあやかったものですが、今回は著者の『昭和史は人にとって大切なことがすべて詰まった、最大の教科書である』という思想を、『怪物』的な人物を軸にして示していただいた形です。まずはなんといっても、著者が深い関心を長年寄せている東条英機。次いで石原莞爾。石原は、著者がその重要性を意識しながらも、これまであまり著作で取り上げてこなかった人物です。本書では、「石原の評伝は書き手の力量が問われる」と前置きしながら、石原という人物の本質に迫ります。ほかにも犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂といった大人物の姿を描くことを通じて、現代に向けたメッセージを発されています」(担当編集者の小林雅宏さん)

 ヒットの背景には、レーベルとしての勢いも影響している様子。

ADVERTISEMENT

「講談社現代新書は近年、『不死身の特攻兵』などの近現代史の企画と、『知ってはいけない』など社会の裏面に光を当てる企画が好調です。本書はふたつの流れが交わるような立ち位置にあり、そこが今の読者に刺さったのではないかと感じています」(小林さん)

2018年7月発売。初版1万部。現在9刷15万部

昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)

保阪 正康(著)

講談社
2018年7月19日 発売

購入する
昭和史は大切なことがすべて詰まった“最大の教科書”だ<br />

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー