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ファッションで得られる“うまみ”はコンサバが最も大きい?――トミヤマユキコ×鈴木涼美

トミヤマユキコ×鈴木涼美 #1

note

著書に『40歳までにオシャレになりたい!』があるトミヤマユキコさんへ、社会学者の鈴木涼美さんが素朴な疑問をぶつけました。「普段ギャルソンとか着てるトミヤマさんは、もうオシャレだと思います」と語る鈴木さんと、「無難な格好ができずに苦節39年」と嘆くトミヤマさん。今年8月に収録した対談のため思いっきり夏服ですが、二人の交わらない「オシャレ観」をお楽しみください!

左から、トミヤマユキコさん、鈴木涼美さん

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途中で「マルイ燃やす」とか言い出すのを期待したのに

鈴木 本、読ませていただきました。それで、いろいろと質問したいことがあって。

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トミヤマ お読みいただきありがとうございます。どうぞどうぞ。なんでも聞いてください。

鈴木 なんでそんなに前髪短いんですか(笑)。

トミヤマ いきなりだなおい(笑)。

鈴木 あと、本のタイトルに「オシャレになりたい」ってありますけど、普段ギャルソンとか着てるトミヤマさんは、もうオシャレだと思います。

トミヤマ いやいや〜、それが全然オシャレじゃないんですよ。

 

鈴木 この本の中で、前髪パッツンで個性的な柄モノとかを着ているトミヤマさんが、どんどんコンサバな服を試着していくのを見ながら、これはきっと終盤で大どんでん返しがある、どっかで発狂して「マルイ燃やす」とか言い出すのを期待していたら、全然そうならなかった。

トミヤマ あはは。「こんな地味な服着たくねー!」って(笑)。

鈴木 そうそう。なんとなくきれいなお姉さんになる本だったのがすごく意外で。私の中でトミヤマさんのイメージは、短い前髪でギャルソンとかを着て尖ったオシャレの人だったので、タイトルの「オシャレになりたい」っていうのは、そのトンガリを研ぎ澄ませてバリバリのモード系とかの方向を目指す本だと思ってました。そうしたら「むしろそれ別にオシャレじゃなくない?」っていう感じになっていったから。

トミヤマ なるほど、そういう捉え方もあるんですね。それは初めての感想です。まず私が思うに、前髪パッツンでギャルソンを着てるからオシャレっていうのがそもそも間違いで。前髪が短いのもギャルソンを着ているのも、とっても楽だからなんですよ。

鈴木 うそ~。楽じゃないですよ~。だって頻繁に美容院行かないと短い前髪維持できなくないですか?

トミヤマ そんなことないですよ。美容院は2カ月に1回くらい。そこで、すっごい短く切るの。あとは放ったらかし。

 

ギャルソンの服を着るのにポリシーなんて必要ない

鈴木 ギャルソンの服は? ポリシーがないと着こなせなくないですか?

トミヤマ ポリシーなんて大層なものは必要ないですよ。川久保玲に申しわけなくなるくらい何も考えてないです。いや、逆に川久保玲を全面的に信頼してるから、何も考えずに着られる。全身ギャルソンってだけで見た目に気を遣っていると思ってもらえるからすごく楽なんですよ。むしろ古着屋で1点ものを探したり、ユニクロとかを取り入れてオシャレにコーディネートするほうが断然ハードルは高い。そっちはモロにセンスが問われるでしょ。

鈴木 ギャルソンはセンス問われないんですか?

トミヤマ 着ればそれなりに見えるのがギャルソンの素晴らしい所です。

鈴木 でも私からすると、雑誌でいうと『CanCam』に載ってるような無難な格好するほうが、センスなくても誰でもできると思うんですけど。

トミヤマ その無難が一番わかんないんですよ。無難な格好ができずに苦節39年(笑)。

鈴木 え~。いわゆる女子アナみたいな格好って、これはカーディガン、これはトップス、これはスカートっていう、個々のアイテムがはっきりしてるじゃないですか。組み合わせも定番である程度は決まってるし。でもギャルソンの服は、裏も表もよくわかんない布みたいな。

トミヤマ 涼美さんにはそう見えているのか(笑)。