文春オンライン

「東大王」鈴木光が書いた「私が考える、これからの教養のかたち」

2019年の論点100

2018/12/04
note

インスタグラムについて調べてみると

 クイズ番組に出演させて頂いて、「せっかく東大に入って、その頭脳をクイズに使うのはどうなのか?」という声を聞くことがあります。それに対しての私の答えは「使うべきだと思います」です。

 

 インスタ映えする写真を見て、それが何県にあるか当てるクイズがあります。亀の形をした駅や、大きな急須のオブジェのある店舗など、思わず笑顔になってしまうような美しい風景が並びます。私は最近までインスタグラムというものをやっていなかったので、あまり詳しくなかったのですが、調べてみると、現代の20代から30代の女性は写真を見て旅行先を決めるなど、今やインスタグラムは購買行動を左右するメディアになっていることが分かりました。また、インスタグラムは写真を中心としたSNSであるために、言語の壁を越えて世界への発信を容易くします。日本人がグローバルにビジネスを展開しようとする時によく問題になる言語の壁を取り払う事が可能になります。その結果、日本人ですらあまり知らなかった小さな町に世界中から人が押し寄せ一大観光地になってしまう事もあります。

 このように、クイズでたくさんの情報を得ることは、私のように偏った世界にいる学生にとって、様々な気付きと広い視野を与えてくれます。能動的でさえいれば、通常では私が関わることがなかったはずの世界とつながる大きなチャンスになっていますし、大きな学びの一つなのです。

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なぜ「リベラルアーツ」を学ぶのか

 東大教養学部の講義もクイズと似たような部分が多々あります。知りたいと思う事を、無制限に誠実な姿勢で教えてくれます。大学の大きな特徴として、義務教育や高校の授業より一つ進んだ学びの形として、与えられるのを待つのではなく、自分から探求し知りたい学問を深く掘り下げていく傾向があります。私の進級先は法学部になるので、本来なら、法学部の専門科目だけを必修とすれば、カリキュラムとして十分、という考え方もできるかと思います。しかし、教養学部ではたとえ法学部を目指すような学生であっても、自由に、文学や宇宙科学などの幅広い講義を履修することを認めてくれます。

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 ここで少し東京大学について触れたいと思います。先ほども少し触れましたが東大は2年生までは一律に教養学部に在籍し、リベラルアーツを学び、3年生から法学部、医学部など様々な専門課程へと進みます。ここで打ち出されるリベラルアーツとは、「学生を文字通り解放(liberate)して、ありきたりの固定観念や先入観から自由で、他者の説を無自覚に受け売りしない、本当の意味で独立した思考の持ち主とするために行われるもの」とされています。