文春オンライン

自衛隊はなぜ「宇宙部隊」を新設するのか

日本の安全保障にとって、宇宙の持つ意味は大きくなっている

2018/12/01
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 おおむね10年の安全保障や防衛力の方針を定めた現在の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)が、策定から5年を迎える12月に改定される。この改定にあたって、「防衛省が『宇宙部隊』新設へ 宇宙ゴミや不審衛星を監視」と朝日新聞が11月19日付で報じている。

〈防衛省は「宇宙部隊」を新たに設ける方針を固めた。部隊は「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)と呼ばれる人工衛星やロケットの残骸のほか、他国の不審な衛星などを監視。陸海空の各自衛隊が統合運用する。2022年度をめどに設置する予定で、政府が来月改定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」にも新設が明記される〉(朝日新聞より)

「宇宙部隊」と報じられているが、当面は宇宙に何かを設置することはなく、レーダーや光学観測による地上からの監視が主となるとみられる。また、部隊の性格を考えれば、「宇宙部隊」よりも「宇宙監視部隊」と記した方が、より実態に即していると思われるので、ここでは宇宙監視部隊と表記したい。

秒速7.7kmのスピードで高度約400kmの軌道を周回している国際宇宙ステーション ©NASA

全地球的な課題となっている

 しかし、なぜ今、宇宙監視部隊を創設するのだろうか。朝日記事では、「宇宙空間での新たな脅威に対応するため、防衛省は宇宙状況監視(SSA)体制の構築を目指している」ことを理由にしている。このSSAは、現在全地球的な課題となっていると共に、宇宙空間に多くを依存する国家の安全保障にとって、死活的意味を有している。

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 なお、SSAの訳語については、官公庁や国の機関の文書でも「宇宙状況監視」、「宇宙状況把握」、「宇宙状況認識」といった乱れがあるので、本稿では単にSSAと表すことにする。また、SSAは米軍が提唱した宇宙空間における安全保障上の概念であり、本稿で取り上げる内容よりも広範な意味を内包しているが、ここでは自衛隊に課せられる宇宙監視に関連したものに限定する。

 実は、宇宙監視部隊の新設は、以前からの既定路線だった。

 2014年に改定された防衛省の「宇宙開発利用に関する基本方針」では、SSAへの取り組みを強化し、「防衛省・自衛隊に宇宙監視を任務とする専従の組織を設置できるよう検討」することが明記されていた。また、2017年には防衛省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間でSSAに関する協力協定が結ばれ、すでにJAXAに航空自衛官が派遣されている。「宇宙部隊」創設を報じた朝日新聞も、今年9月14日の記事で、創設に向けての準備を取り上げており、あとは実際に部隊を創設する段階にまで来たと言えるのかもしれない。