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「恋愛とセックス、もうしない」――内田春菊、大腸がんと人工肛門(ストーマ)を語る

内田春菊インタビュー #2

2018/12/13
note

いつも思い出す、佐野洋子さんの言葉

──では、内田さんはもう恋愛しないとして(笑)、まだこれから恋愛も結婚も出産も考えている若いオストメイトの女性は、どういうところで悩みを話せばいいと思われますか。

内田 「ブーケ」という女性オストメイトの会があるんですけど、そういうところで同じ病気の方と交流するのもいいかもしれません。若い女性限定らしいと最初聞いて、「じゃあ私は弾かれるな」と思っていたら、まだ入れてもらえるみたいなので、ギリギリ私も大丈夫そうです(笑)。

 

──同じ悩みを持つ方との交流や、自分の気持ちを話せる場所があるのは心強いですね。

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内田 病気をしてもしなくても、本当にいろいろな人がいます。出産もそうでしたけど、結局、どんな経験談も参考にしかならないですし、私自身が自分でいろいろほかの人の話を聞いたり調べたりしている時に「うわぁ、人にすすめたくない」と思うような経験談もたくさんありました。

 がんで亡くなられた佐野洋子さんは、「あたし『まさか自分ががんになるとは』なんて思わなかったわ、がんなんて誰だってなるじゃない」とおっしゃっていたことがありましたが、息子さんが高校生の時やんちゃで、ずいぶん大変な思いをされていたそうです。後年になって「今思えば、あの満ち足りた日々」と懐かしそうに話されていたのを、いつも思い出しています。私も今は、「漫画も重版かかったし、焼け太るとはこのことだろう」なんて思ったりしていますが、いつか「大腸がんになって、人工肛門になって、いろいろ大変だったけど、今思えばあの満ち足りた日々」などと思い出す日がくるんでしょうか。あ、でも、人に「焼け太り」なんて言われたら、きっとムッとしますけどね(笑)。

 

うちだ・しゅんぎく/1959年長崎県生まれ。84年4コマ漫画でデビュー。93年発表の小説『ファザーファッカー』と94年刊の漫画『私たちは繁殖している』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『南くんの恋人』『お前の母ちゃんBitch!』『おやこレシピ』など作品多数。『がんまんが』と続編の『すとまんが』で自身のがんやストーマ体験の経緯を描いている。最新刊は『ダンシング・マザー』。

ダンシング・マザー

内田 春菊(著)

文藝春秋
2018年11月22日 発売

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「恋愛とセックス、もうしない」――内田春菊、大腸がんと人工肛門(ストーマ)を語る

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