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プロ人生の危機を乗り越えろ ヤクルト・廣岡大志が味わった“三つの屈辱”

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/06/30
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プロ入り以来、最大の危機を乗り越えろ

 かつて、ヤクルトに在籍していた今浪隆博さんは、現役最終年の「ファン感謝デー」において、ファンに引退のあいさつをする際に「引退の理由は廣岡に押し出されたからです」と語っていた。半ば冗談気味ではあったものの、後にその真意を尋ねると、今浪さんはこう語った。

「あれは、あの発言のままです。廣岡ってスケールが大きいというか、並みの選手ではないですよ、ポテンシャルが。それに、そこそこ顔がいい。スタイルがいい。プレーしている姿がカッコいい。ファンの人に応援される要素を持っているんです。これはとても重要なことです。そういったいろんなものを兼ね備えている選手。それが廣岡なんです」

 べた褒めだった。プロが認めるほどの潜在能力を秘めた選手、それが廣岡大志だった。しかし、プロ4年目を迎えた今年、廣岡はあえぎ続けている。開幕以来、41打席無安打という不名誉な記録を作り、6月14日の対埼玉西武ライオンズ戦でようやく今季初ヒットを放ったものの、いまだ打率は1割に満たない状態が続いている。プロ4年目にして、最大の苦境に立たされていると言っても過言ではないだろう。

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 智弁学園高校の1年先輩である巨人・岡本和真はプロ4年目の昨年、大ブレイクを果たした。だからこそ僕は「今年は廣岡の番だ」という願望とともに、今シーズンに期待していた。京セラドーム大阪で始まった今年のペナントレース。廣岡は開幕スタメンに、その名を連ねていた。僕は翌日の試合前に、大阪にある廣岡の実家「廣岡精肉店」に向かった。名物のコロッケやメンチカツを食べつつ、廣岡の活躍を期待したいと考えたからだ。

 話題のコロッケやメンチカツは本当においしかった。そして、その店頭には、訪れるファンのために「廣岡大志 応援ノート」が置いてあった。そこに書かれている多くのファンの期待と激励コメントを見ながら、僕もまたメッセージを添えた。

「飛躍の4年目! 今年も期待しています!」

 スタートダッシュには大きく躓いた。けれども、シーズンはまだ続く。ノートに書いた僕の思いは、いまだ微塵も変わっていない。まだまだ逆襲のチャンスはあると信じたい。飛躍の4年目を迎えた廣岡大志に、それでも僕は期待している。

廣岡精肉店に置いてあった「廣岡大志 応援ノート」 ©長谷川晶一

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