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1年生ながら関東インカレで3位に入賞

 鹿居に転機が訪れたのは、大学進学の際だったという。

「高校で陸上は一区切りにしようかと思っていましたが、佐藤信之監督に『お前と関東で暴れたいんだ』と声をかけてもらいました。駅伝をやっていたので箱根駅伝を目指しての進学になったものの、監督と『まずは中距離から身体をつくっていこう』という話になって。そうして練習しているうちに記録が伸びて、本格的に800mをやるようになった感じです」

 入学後に取り組んだ800mでメキメキと頭角を現した鹿居は、1年生ながら関東インカレで3位に入賞するなど、はやくから活躍を見せた。高校時代には与えられていただけだった練習が、大学に入って中距離に専門的に取り組んだことで、自分でもトレーニングについて考えることが多くなったことが成長の理由だと分析する。

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 ただ、その一方で、急に上がった競技レベルに身体がついてこれず、故障に悩むことも少なくなかった。

「1年生の関東インカレでいきなり表彰台に乗れたんですけど、次の日に足が痛くなって。それで病院に行ったら『疲労骨折しているね』と言われて……。その後も年に1回くらいは骨を折っているんです。大学はケガを抱えながらのことが多かったですね。他にもぜんそくになったり、内臓系の不調があったりと、なかなか継続して練習ができないことも多かったんです」

カメラに指を向けて「俺を見ろよ!」

 練習が積めないというのは、そのまま選手自身の不安の増大にもつながる。不安をレース前にどう取り除くのかは、多くの選手にとって大きな課題でもある。

 そこで鹿居が辿り着いたのは、派手なパフォーマンスで自身の気持ちを奮い立たせるという方法論だった。

 

「去年の関東インカレの直前にも足を骨折してしまって、無理やり急場しのぎで出場をしたんです。全然調子も上がっていなくて、自分としてはすごく不安な中での大舞台でした。なんとか決勝までは残れたんですけど、正直周りの選手も力のある選手が多くて『自分にベストなパフォーマンスができるのかな?』と不安にかられてしまって……。

 そこで自分をあえて追い込むというのと、大会を楽しもうという意味も込めて、カメラに指を向けて『俺を見ろよ!』みたいな感じでコールの時に少し大げさにやったのが評判になって。『あの場面でああいうことができるってすごいね』とチームメイトに言われたり、そういう意味で注目を集めたのが最初だと思います」

 もちろん派手なアピールは自分にプレッシャーをかけることにもつながる。ただ、鹿居にとってはその重圧は集中力へとつながった。

 結果として、去年もハイレベルな関東インカレの表彰台に上がることができた。そこからはひとつのルーティーンとして、マンガの1シーンや特撮キャラの決めポーズなどを大会ごとに繰り出していたという。