田中健二朗がトミー・ジョン手術をするという。夏場のこの時期に手術に踏み切るということは、復帰は早くて来季の終盤。来季というよりは、むしろ2年後に向けた決断。優勝争い真っ只中のチームにおいて、2年後の戦力として期待されているということは、健二朗も幸せな男である。
高校時代、3年春の甲子園で優勝投手となり、夏の甲子園でもベスト4まで勝ち上がった。この二大会だけで6勝をあげているのだから、高校時代からよく投げて、そして勝ち運にも恵まれていると言える。あの細い体で、あれだけのボールを投げ、しかもシーズン50試合以上投げるのだから、体に無理が来ないはずがない。類まれなセンスと運でチームに貢献するために、まずはしっかりと治してもらいたい。
非甲子園組の方が多数派なプロ野球界
さて、甲子園が絶賛白熱中である(強引!)。健二朗のように甲子園で10試合近く戦った者もいれば、私のように一度も甲子園に行けなかった者もいる。プロに入ってから選手同士で甲子園の話になった時、非甲子園組はどこか肩身の狭い思いをしたものだ。しかし、2018年の外国人を除く全プロ野球選手を見ると、甲子園を経験した選手は46%で、甲子園を経験していない選手が54%と、実は非甲子園組の方が多数派なのである。「えっ、甲子園行ってなくてもプロになれるんですか?」と聞かれた回数はもう数えきれないが、これからは、「いや、54%は甲子園未経験者です」と自信を持って言い返すことにしよう。
甲子園を観ていてワクワクしたりドキドキしたりするのは、そこで繰り広げられる勝負の一つひとつが、全力で、しかも勝負を超えた何かをぶつけ合っているからだ。それは、自身が駆け抜けてきた2年半の集大成かもしれないし、仲間の思い、家族の期待といった、自分以外の感情かもしれない。いずれにせよ、生々しく、猛々しい18歳同士の剥き出しの闘志がぶつかる様は、観ている側の闘志まで呼び起こす。それは、高校野球の醍醐味と言えるだろう。私は甲子園には行っていないが、その勝負の過程は経験してきた。だからこそ、プロ野球に入った時は高校野球との違いに大きな戸惑いを覚えた。勝負の質が違いすぎる。間違いなく、高校野球の延長線上に、プロ野球はない。それは、別競技と思えるほどの違いだった。