初めて歌った特撮ソングは「ずっとダメ出し」だった
――串田さんをはじめ、アニメソングや特撮ソングのシンガーのみなさんは、昔と変わらない歌声を維持して、歌い方も絶対に変えないという印象があります。
串田 最初に歌った特撮ソングは『太陽戦隊サンバルカン』(81年)でしたが、レコーディングでものすごく苦労しました。そのときに得たものは絶対に忘れられません。それをずっと続けようと思っているんです。
最初に日本コロムビアのディレクターの方に「どうすればいいんですか?」と尋ねたら、とにかく「カッコよく歌ってほしい」と言われて。そこで自分なりにカッコよく歌ってしまったわけですよ。それまではずっとリズム・アンド・ブルースを好き勝手に歌っていましたし、『マッドマックス』の曲(日本語版主題歌『Rollin' Into The Night』79年)も英語で歌っていましたが、特撮ソングはぜんぜん違う世界だったんです。
どれだけテイクを重ねても、ずっとダメ出しをされて、本当にどうしていいかわからなくなるぐらいでした。それでも、「こうしなさい」とは絶対に言われないんです。どれだけテイクを重ねても、なぜダメか教えてくれませんでした。
強さとカッコよさだけでない“優しさ”
――そのような大変なレコーディングから串田さんがつかみ取った、アニメソング、特撮ソングにとって大切なこととは何だったのでしょう?
串田 ヒーローの強さ、カッコよさだけでなく、ヒーローが持っている内に秘めた優しさも歌の中に込めていくことですね。ただ、強さをぶつけていくだけじゃなく、ちょっと引いて、内側からジワッと優しさが出るような歌にしなければいけなかった。
あとは、小さなお子さんたちのために、言葉をはっきりさせて、わかりやすく歌うことです。たとえば、リズム・アンド・ブルース的な抑揚をつけて歌ったら、小さなお子さんが聴いたときに「難しい」と感じてしまうでしょう。わかりやすく歌いつつ、そこに優しい感じが出ていればいいと思っています。
――その原点を今でも大切にされているんですね。
串田 はい。実は『サンバルカン』のときは、なぜOKがもらえたのかわからなかったんですよ。その後、同じディレクターが担当した『宇宙刑事ギャバン』(82年)のときに全部わかったんです。『サンバルカン』のレコーディングは何時間もかかったのに、『ギャバン』はすぐに終わりましたからね。ディレクターが説明しなかった理由もわかった気がしました。大切なことは自分でつかまないといけなかったんですね。