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文春野球コラム

2020年6月30日の札幌ドーム──上沢直之の1年、中島卓也の12年

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/03
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 6月30日、ファイターズ対ホークス1回戦。この試合はいろいろと感慨深いものになりました。

 まず軽いところでいうと、ファイターズの今季ホーム初戦。6月19日の開幕以来、ずっとビジターゲームが続いておりました。遂に、ようやく、10試合目にして待ちに待ったホームゲーム! もちろん今年の場合、待ちかねたファンで札幌ドームのスタンドが埋まる訳ではないのですが、それでもやっぱり心持ちは違います。思えば開幕前の練習試合もずっとビジターで、本当に久し振りの札幌ドーム。やっと、この日が来たんですねえ。

 といってもこれは前座といったところ。「やっと、この日が」のメインイベントは、ファイターズの先発投手です。前日に予告先発が発表された時から、ツイッターのTLは一気に色めき立っておりました。上沢直之378日ぶりの復帰登板!

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 この文春野球でも何度もファイターズコラムの題材となっておりますが、打球が直撃して左膝の皿を骨折したのは去年6月18日のことでした。整復固定手術を受け退院したのが30日。そのあと初めてブルペンに入ったのは今年2月の春季キャンプ。実戦復帰は6月2日の練習試合で2イニングでした。12日には3イニング。20日のイースタンリーグ開幕戦で更に5イニング。そしてとうとう1軍のマウンドに戻る日が来たのです。怪我をしてから378日。退院してから丸1年。長かった。長かった!

378日ぶりの登板を果たした上沢直之

堂々と札幌ドームのマウンドに帰ってきた上沢

 予告先発の報を受け、《コーヒー豆買ってきます》とツイートしたのは文春野球ファイターズえのきど監督。そう、えのきど監督はこの1年間、快癒祈願のコーヒー断ちを続けていたのです。エースを待ちわびるファンの写真やイラストもいくつもTLに流れてきました。開幕からの9試合は4勝5敗、全部ビジターだったことを考えればそこまで悪い結果でもないと言えましょうが、イーグルスとの6連戦では何と18失点という大敗も喫したりして、どことなく何となく心なしかファンはおとなしくなっていたような空気があったのです。それがこの予告先発で一変しました。彼の元気な姿を早く確かめたくて、皆そわそわし始めたんです。

 とはいうものの最初からあまり過剰な期待はかけちゃだめだと自分に言い聞かせておりました。滅多に聞かないような大怪我だったんです。長い長いリハビリ期間だったんです。試合勘もまだそれほど戻っていないかもしれません。練習試合や2軍戦でも長いイニングを投げた訳ではないのだし。もしかしたら3回ぐらいまでかもしれないけれど、それでもいいじゃないか。とにかく1軍に戻ってきたんだから。

 そう思って迎えた翌日の試合、上沢直之が投じた初球は150キロのストレートで見逃しのストライク。1回表は15球で三者三振という立ち上がりです。病み上がりだからとあらかじめ言い訳を用意していたような態度でいたのを大いに反省しなければなりません。彼は堂々と札幌ドームのマウンドに帰ってきました。

 5回を投げたところで69球。この時、試合は1-1の同点でありました。復帰初戦であることを考えるとベンチも無理はさせますまい。6回から継投に入るんじゃないかしら。でもそうなると、彼に勝ちがつくためには5回裏に勝ち越さなければならない。

 いや、勝ち星なんておまけです。小さなことです、再び投げられるようになったということに比べたら。こんなに好投しているだけで十分ではないかと思いながら、その好投に「勝利投手の権利」で花を添えられたら、という気もやっぱりしてしまうのですね。

 という観点のみで5回裏を注視していたものですから、気がつくのが少々遅れてしまいました。期待もむなしくファイターズは三者凡退の無得点に終わった訳だったのですが、この回のラストバッターだったのが中島卓也。彼のセカンドゴロでスリーアウト、これで5回が終わって試合成立となりまして。

 中島卓也、1000試合出場達成。

 この日この試合の意味がもう1つ増えました。

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