本性3:国内の安定が大前提の「内向きの国」
そして3つ目の特徴が、中国が実は、本来とても「内向きの国」であることです。
中国という国を地球儀で見てみると、どれほど広大な領土であるか、改めてわかります。中央アジアの砂漠地帯も、東南アジアの海洋文明も、北方アジアの狩猟民族も混ざり合っている。本来、全く生活形態が違う人々が国家に類する社会集団を形作る、巨大な多民族・多文明国家なのです。
しかし、その国家はこれだけ多様な人々を、あれだけ広大な領土の中でまとめなければならない。だから、中国の対外行動の大部分は、国内秩序の安定という至上命題に大きく規定されている。いいかえれば本質的に非常に内向きの国なのです。
それゆえ、そんなことをすれば、世界を敵に回す、と頭では分かっていても、国内の不満や軋轢が噴出すれば自分たち自身が瓦解してしまう。それゆえ外から見ると、暴走としか見えない行動をとらざるを得なくなるのです。
習近平政権の国内問題という足元は、昨年から揺らいでいました。そもそも香港に「国家安全法」を制定しなければならなくなった一因は、沈静化できなかった香港デモ。それが、中国本土に波及することを恐れたのも、今回、「香港処分」に踏み切った大きな理由の一つです。しかも、中国は香港だけでなくチベット、ウイグルなどにも火種を抱えています。
さらに、長年言われている農村と都市の格差問題や、一説には何千兆円規模とも言われる不良債権問題も抱えている。相当な勢いで成長してきただけに、この数年で明らかになってきた中国の経済成長の鈍化が市場と社会全体に及ぼすインパクトも甚大です。そこに、コロナ・ショックで需要も供給もストップし、大量の失業者が溢れ出しています。
そんな行き詰まった国内問題のために、国民の目を国外に向けさせたい。解決困難な国内問題に対する回答として、外交が利用され対外強硬策に出ている。また他方では、自国のコロナ禍も完全に収まっていないのに、外国にマスクや医療品を配って協調姿勢を見せる。かと思うと、日本など周辺地域には軍事的圧力も強めるような事態が生まれるのです。これらは、結局、国内要因によるところが大きいと思われます。