しかし、繰り返しますが、日本が大前提とするべきは、米中間で軍事を含めた鋭い対立や危機が起きた時には、日本は間違いなく「アメリカの側につく」とつねに明白にしておくことです。もし、この点であいまいさを残していると、日本は孤立するだけでなく、本当の危機を誘発することになりかねないからです。「安保はアメリカだけど、経済は中国だから……」などと“真ん中”に立ってその場をしのごうとする姿勢は、今後は日本の存続にとり大変危ういことになりかねません。
思い出すべきは、フランスのド・ゴール大統領の言葉です。彼に率いられたフランスは、第2次大戦後の冷戦中においても、アメリカにたびたび反発し、ときには反米的な外交政策も採っていました。ところが、1962年のキューバ危機では諸外国の指導者に先駆けて、「われわれは断固、アメリカを支持する」と言った。土壇場で周りの顔色をうかがったり、逡巡したりすれば、関係は一気に瓦解してしまいます。これは古代ギリシャから言い習わされている、危機における同盟国として一番大切なふるまいなのです。
この日本の立場を明確に中国側にも示した上で、米中間の危機的な状況をいかに回避するかが、日本外交に与えられた役割なのです。
共存するために「突き放す」覚悟を
世界の中国を見る視点が大きく変化している中で、世界は日本の振る舞いに注目しています。日本という国が、いわば世界に「模範」を示すような役割が求められているのです。
一方では、高い中国依存度と同時に、他方で中国とも渡り合える経済力・技術力を持ち、また地理的な接近性を持って、長い歴史を共有している。そんな日本が中国に対してどのように振る舞うのか、世界が悩んでいるからこそ、注目が集まっているのです。
問題は日本人の決意如何なのです。世界経済への影響力を背景にして中国がコロナ禍に一体どんな対応をしたか、そして今、香港に対してどんなに酷い振る舞いをしているか、我々日本人はよく知っています。2020年という歴史の節目の中で、一方では日本は、中国との接点を維持しつつ、しかし世界有数の民主主義国家として、一線を越え出した中国の強硬外交を抑止する包囲網の一翼を担い、世界にその「気骨」を見せるときです。
日本の為政者、あるいは日本の国民も、中国にどのように対応していくべきなのか。いま覚悟が問われているのです。