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「元アイドル」はパワーワードであり十字架

「版元にツテもないので先輩ライターのブックイベントに乗り込んで、質問タイムで『私も本を出したいので出版社を紹介してください』って手を上げて。もはや質問でもないですよ。でも、思い描いていたキラキラ人生計画に失敗して底つきしたら周囲の目もどうでもよくなって、なにかが吹っ切れたんです。

 そもそも48グループをやめた方たちに話を聞きに行くこの本の企画も、最初は私の怨念晴らしみたいな気持ちだったんです。

大木さんの著書『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)と、
アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)

 あのとき私たちって華やかな48グループにいたけど、実はすごく孤独じゃなかった? その孤独をおくびにも出せず、『ファンのみなさんに支えていただいて』しか言えなくなかった? どんなにいい子でも周りは全員ライバルで、その子より上にいかなきゃいけないってやっぱりめっちゃしんどいシステムじゃない? 

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 そんな風に抱えこんでいたもやもやの正体を探しに行く旅でしたが、いざ取材してみると、彼女たちは元アイドルの経験をきちんと昇華させ、自分の人生をしっかり生きていました」

「元アイドル」はパワーワードである。その十字架を背負って活躍している女性は数多存在するし、今後も続いていくだろう。一方で、大木さんが書籍の中で取材した人々のように、「元アイドル」をうまく成仏させられていない人もいるという。

 

「以前、元アイドルの後輩とプライベートで話す機会があったのですが、何を聞いても『今の私がいるのは、ファンの方、スタッフの方のおかげ』ばっかりで、彼女の本心が見える言葉が全然聞こえてこないんです。そのときは彼女の胸ぐらを掴んで、『いつまでも浅瀬で泳いでんじゃねーぞ!』ってキレそうになりました。

 でもその怒りって、過去の自分を見ているような気持ちになったから湧いたもので、彼女と自分は紙一重なんですよね。これまで優等生フォーマットに自分をはめ込んで全方位にいい顔をしてきたわけですが、元アイドルという十字架を消すことはできなくとも、いつかはその枠から抜け出す努力をしなくちゃいけない。私自身、『元アイドル』というキャッチーさでたくさんのメディアに取材してもらった身。それでも、《利用する/される》構図にならないよう、1人の人間として生きていく必要があるんです」