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なぜ2020年のジャイアンツは強いのか? 一冊の本で振り返る

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/20
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“100点満点”だった脇役の台頭という課題

3.ポスト阿部慎之助

 その阿部が引退して初めて迎えるシーズンだったわけだが、数年前から議論されていた「ポスト阿部の正捕手争い」に一定の決着がついた。『令和の巨人軍』では、炭谷でも小林でもなく「しばらく27歳の大城が強化指定選手として優先的に起用されるはず」と書く一方で、「今の巨人は正捕手の不在というより、阿部慎之助という規格外の選手の幻影を必死に3人でワリカンしているように映る」とあるが、その“幻影”を完全に振り払ったのが、今季の大城の活躍である。もともと打撃に定評があったため、一塁手での起用も多かったが、今季は小林の戦列離脱もあり、マスクを被る機会が激増。エース菅野との“スガシロ”コンビも定着し、リーグ捕手トップの9本塁打、38打点と阿部にはまだ及ばないが「打てる正捕手」の位置を固めつつある。

4.次のエースは誰だ⁉

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 開幕13連勝を達成し今季の巨人軍を牽引した“絶対エース”菅野。『令和の巨人軍』では、「仮に流出となれば、その穴は(略)上原のメジャー移籍時より、チーム編成上において遥かに大きい。近い将来、巨人は長年スーパーエースに依存し続けた代償をどこかで払うハメになるかもしれない」と、エースのメジャー移籍をフライング気味に危惧している。

 今季の無双ぶりを見ても、先発陣における菅野への依存度はあまりにも高く、新人王争いをしている2年目の戸郷、復活を果たした畠、あるいは高橋や直江らがその穴を埋めるのかどうか。コロナ禍でメジャーの運営も来季以降は不明、菅野の心の裡はわからないが、はたして次世代エースの台頭となるか、それともFA補強でその穴を埋めるのか……。

5.名脇役、募集中!

 2019年の巨人はリーグ優勝を果たしたものの、「総合力」という点では、まだまだ発展途上と言わざるを得ない状態だった。それはソフトバンクに4連敗を喫した去年の日本シリーズの結果を見れば明らかである。必要だったのは、坂本・丸・岡本以外の打線の充実、代打の切り札、中継ぎ陣といった“脇役”たちの台頭と活躍である。「名脇役たちの存在はチーム力を底上げする。(略)映画でもドラマでもスターを漠然と並べるだけでは、いい作品は作れやしないのだ」と『令和の巨人軍』では指摘しているが、今季ジャイアンツはどうだろうか。

「募集中!」だったポストに人材が殺到。二塁レギュラーを掴んだ吉川尚輝や代走の切り札・増田大輝、ブルペンを救った21歳サウスポー大江竜聖、楽天からトレード移籍の高梨雄平など、こと脇役の台頭という課題については“100点満点”だったのは、衆目の意見が一致するところだろう。その点、中溝氏が指摘した“脇役の不在”はいい意味で裏切られたわけだが、ファンが見たいのは、主役の活躍だけではない。30年前の上田のような“一瞬の光”、それこそを長く記憶にとどめておきたいのだ。

 最後に、『令和の巨人軍』の表4(ウラ)の帯にある言葉を紹介する。そのひとつには、「ドラフト会議での“クジ運”を祈る」とある。はたして今年は――。「令和の巨人軍」の行く末を占うドラフト会議は、6日後に行なわれる。

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