松井には求められるポジションと実績、そして素直さがあった
ただ、2020年の松井裕樹みたいなことって、サラリーマンとして会社組織で働いていてもよくあることだろう。
入社から数年連続営業トップ、自分の希望通りに憧れだった新規事業の部署に異動。しかし、鳴り物入りではじめた新規事業が大失敗。松井本人の葛藤は推して知るべし。プロ野球も人生も、順風満帆だけではそうそういかない。
先発転向失敗を認めず先発にこだわったままフテ腐れシーズンを棒に振ってしまう選手もいるなか、松井には求められるポジションと実績、そして素直さがあった。営業成績に苦しむ古巣の部署から戻ってきてとみんなに言われるトップ営業マンのように、守護神としての復帰をチームもファンもみんなが待ち望んでいた。
10月1日、今シーズンはじめてチームの総意としてセットアッパーに転向すると初戦こそ破れたものの、8連続ホールドポイント。
そして10月30日対マリーンズ戦。松井裕樹25歳の誕生日。
ZOZOマリンの最終回のマウンドに上った松井。目ン玉飛び出るような剛速球にキレのあるスライダー、バッターボックスでクルリとまわる39歳の鳥谷敬。そこにいたのは、この日通算140セーブ目を積み上げた守護神だった。
そして昨日11月1日マリーンズとの最終戦。9回から登板した松井は回をまたいで2イニング3奪三振でピシャリと抑え、負けたら即終了の試合をギリギリ引き分けに持ち込む立役者となる。
適材適所、人間は置かれた場所で咲くことが重要なのだ。結果として松井裕樹には先発転向失敗というドラマが生まれ、シーズン後に今季の総括をもっとも聞きたい男となった。まだそして若いのだから、気が済むまでまた先発にチャレンジすればよいのだ。
チームにとっては紆余曲折、ブセニッツー松井へとつなぐ、シーズ
もう大丈夫だ、残り5試合全勝で。いざクライマックスへ。
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