1ページ目から読む
2/2ページ目

俺たちのセ・リーグをこれ以上バカにするな

 3連敗後、第4戦の試合前だったか。文春野球でもおなじみ巨人の死亡遊戯さんが、PayPayドームのとんこつラーメンを「悔しいぐらい美味しい」とつぶやいているのをみて、おじさんははじめて彼を抱きしめてあげたくなった。

 俺も昔、スコット・マレンが初回KOされた東京ドームで、高くて買えやしない蟹工船やら叙々苑の高級弁当に圧倒的な敗北感を抱いたよ。「横浜ベイスターズ」最後の試合で山口が長野に代打逆転サヨナラ満塁ホームランを浴びて、涙も出ないほど打ちのめされた。あの時の悔しさは、生涯忘れることはない。

 ベイスターズの選手やOBに何度も聞いた「負けはすべてを黒く塗りつぶす」っていうあの感覚を、いま巨人がむちゃくちゃ浴びている。「セ・リーグはヌルイ」「実力差があるのに、同じ入場料でもったいない」「1リーグ制にしろ」。ここぞとばかりに尻馬に乗って言いたい放題。そんな風潮にムカムカする。

ADVERTISEMENT

 巨人は今年、俺たちに勝ったのに。セ・リーグを、ダントツの強さで優勝したのに、あんまりじゃないか。

 そんな感情を持っちゃいかんのだ。巨人だけは、違うと思っていた。セ・リーグは巨人という唯一自分で盟主と謳ってしまう憎らしい存在があって、そこに俺たち5球団がキーキーとライバル意識を燃やすという構図で成り立ってきた。パ・リーグみたいな白いボールのファンタジーな一体感は絶対に生まれない。現実に、細川たかしの「6つの星」は歌えないし、最近までオールスターで巨人の選手は応援しないセ・リーグファンも結構いた。もしかしたら俺みたいな大洋ファンが、シリーズだからって巨人を応援するなんてことも、礼儀としてしちゃいけないのかもしれない。

 ただ、俺は悔しい。負けたのはしょうがない。でもなめられて、慰み物にされることが死ぬほど悔しいのだ。DH制で勝てないなら、DHなしで勝てばいい。DH導入?セ・リーグの野球になぜ誇りを持てない。俺のベイスターズだけじゃない。俺たちのセ・リーグをこれ以上バカにするな。

 あの2017年の日本シリーズ第6戦だ。ベイスターズとソフトバンク。第2戦の今宮“神の手”で憤死しかけたおじさんは、そのまま肺炎になって入院のベッドの上でラジオを聞いていた。

2017年の日本シリーズ第6戦、先発の今永昇太

 あと一歩のところでヤスアキのベストピッチは内川に同点弾され、梶谷の最高のバックホームは、嶺井の目の前でイレギュラーして勝利はすり抜けた。あの時、ベイスターズは確かに鷹の背中を見た気がした。だけど、今この日本一のホークスの強さを目の当たりにして、日本一になるには全然及んでいなかったんじゃないかと感じている。

 いつまで「何故パ・リーグが強いのか」なんて対等の目線で議論しているのか。パ・リーグがどれだけ長い時間を掛けてセ・リーグを本気で倒しに来たのか知っているだろう。

 本気になってくれ。どこでもいい。本気でソフトバンクを、パ・リーグを倒すという気概を見せてくれ。

 来季への戦いはもうはじまっている。まずはFA絶対死守! 梶谷、井納、ソトを調査? だから同じセ・リーグから取ろうとしてどうするんだよ!

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム 日本シリーズ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/41482 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。