両チーム合わせると「ホークスOB」が7名もいる。これは是非この目で観なければと足を運んだのが熊本のリブワーク藤崎台球場だった。

 4月9日~11日に行われた九州アジアリーグの交流戦、火の国サラマンダーズ(本拠・熊本)対琉球ブルーオーシャンズ(本拠・沖縄)の3連戦だ。初日を除く2試合を現地で取材してきた。

 まず九州アジアリーグとは? 今季新設されたプロ野球独立リーグで、加盟球団は前述した火の国サラマンダーズと大分B-リングスの2球団のみ。来年からは2球団参入して4球団体制でのリーグ運営が見込まれているようだ。

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 ただ現時点では2球団でリーグ戦を行うといってもあまりに味気ないので、福岡ソフトバンクホークス三軍や独立リーグ球団との「交流戦」が相当数組まれている。その中の一つが琉球ブルーオーシャンズとの試合というわけだ。

 一方で、この琉球ブルーオーシャンズは独立リーグに属さないプロ球団(日本独立リーグ野球機構の賛助会員ではある)という少し珍しい形態をしている。2019年7月に設立され、将来的にNPBでエクスパンション(球団拡張)が行われた場合に加盟することを目標に掲げてチーム活動が開始された。本来は昨年からNPB各球団のファームや各独立リーグや台湾リーグなどと試合を行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で沖縄県内のみでの活動となり、この熊本遠征(その後大分→熊本→宮崎と続く)がチーム発足後初となる県外での試合となった。

ホークスOBが総勢7名 火の国サラマンダーズ対琉球ブルーオーシャンズを取材してきた

 ずいぶんと説明が長くなってしまったが、今回会いに行った「ホークスOB」は次の面々だ。

 火の国サラマンダーズは細川亨監督、馬原孝浩ピッチングGM、吉村裕基選手兼コーチ。琉球ブルーオーシャンズは寺原隼人コーチ、井手正太郎コーチ、李杜軒コーチ、亀澤恭平選手。

 火の国の3人とは先月も会っていたが、琉球はこれまで取材機会がなく4人とは本当に久しぶりの再会だった。寺原コーチは「僕はホークスに始まって、横浜ベイスターズやオリックス、一度ホークスに戻ってから最後はヤクルトでもプレーしました。たくさんの監督やコーチにお世話になった。それぞれ勉強させてもらったものを今に活かしています」と話してくれた。

寺原隼人コーチ ©田尻耕太郎

 剛速球のイメージも強い彼は「自分がこのような方法や考え方でボールを速くしたというのを選手たちには伝えています」とのこと。

「このチームの選手たちは上のステージ(NPB)を目指している。球速がすべてではないけど、ドラフト指名されるのには一定以上の球の力やスピードも必要になりますから」とその理由も加えてくれた。

寺原コーチと馬原孝浩ピッチングGM ©田尻耕太郎

 井手コーチは「沖縄生活、楽しんでいますよ」と笑顔。引退後は実業家としても活動しており、「パソコンがあればどこでも出来る仕事ですから」と両立させているようだ。李コーチは「僕の中のコーチ像は鳥越さん」と言い、試合中は三塁コーチャーも務めていた。亀澤はホークスで育成だったが、中日ドラゴンズに支配下選手として移籍。一軍でも5年間で421試合に出場する実績を残した。琉球入団当初はコーチ兼任だったが、今年は選手一本で勝負をしている。「今32歳です。前とプレー、変わっちゃいました?」と訊ねられたが、ショート正面のゴロを内野安打にする俊足ぶりはまだ健在で、明るいキャラも以前のままだった。

 そして、両チームは好試合を展開した。9日の初戦は2-1で琉球の勝利。10日の2戦目も琉球が攻勢で、3-0と9回裏2アウト走者なしでリードをしていた。そこから火の国サラマンダーズが怒涛の猛反撃を見せて3-3に追いつき、なおも一打サヨナラ機では琉球の2番手マウンドに急きょ立った松本直晃(元西武ライオンズ)が踏ん張って3-3の引き分け試合となった。11日の3戦目も9回裏に劣勢の火の国が粘りを見せて吉村の犠牲フライで1点差に迫った。ただ、この日は琉球が何とか逃げ切り4-3で制して、この3試合は琉球の2勝1分という結果だった。

亀澤恭平と吉村裕基選手兼コーチ ©田尻耕太郎

 火の国の細川監督は勝てなかった悔しさを胸の中に残しつつも、チームの姿勢に手ごたえを感じていた。

「シーズンが始まってから1点差とかシーソーゲームを何度も経験して、チームは強くなっている。メンタル的に最後まであきらめないという雰囲気が毎回ある。大分B-リングスとしのぎを削って勝ってきた成果が出ている。サラマンダーズらしい野球ともいえる。オープン戦でも、大差をつけられた中で追い上げた試合もありましたし」

 この野球スタイル。前回の「文春野球コラム」で紹介した川島慶三の示すホークスの野球ととても似ている。