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「動物に例えると彼はネコです」高橋慶彦さんが語る、菊池涼介は何がすごいのか

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/14
note

 全国のカープファンの皆さん。元広島東洋カープの高橋慶彦です。昨年10月にこの文春野球コラムペナントレースでコラムを書かせていただきましたが、今回、再びこの場で書かせていただくことになりました。よろしくお願いします。

 今回は、ズバリ、プライベートでも交流がある菊池涼介選手について書きます。というのも、菊池君と仲良く写真に写っている姿などが自分のツイッターを含むSNSなどで公開され、多くの方から「どういう経緯で仲良くなったのですか?」あるいは「年が離れているのに仲がいいですよね?」と聞かれることが多く、せっかくなのでこの場をお借りして書かせてもらえればと思った次第です。

菊池涼介

「なんか俺と同じ匂いがするな」

 2年ほど前、広島ローカルの正月特番で菊池君が広島の街を探索する番組があって、そのサプライズゲストとして自分が出演したんです。それまでにも交流はあったのですが、プライベートで食事をしたりするようになったのはその番組がきっかけですね。

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 彼の性格は、本当にあのまま。皆さんが見ているとおりです。あっけらかんとして、僕の目の前でビシッとするわけでもなく、普通に接してくれて。逆にそれが嬉しかったんですよ。目の前で硬直されているよりは気が楽なんで。もしかすると菊池君とは感覚的なところが合うのかもしれません。初対面の時も「なんか俺と同じ匂いがするな」って思ったほどなので。

 彼のあっけらかんとしてる部分を例に挙げると、たとえば「今度大活躍したらメシおごってやるよ!」なんて約束をして、実際そうなるとしますよね。僕としては約束も果たしたいし、もてなしてあげたいんで「よし。寿司に行くぞ!」と連絡をするんです。すると「魚は嫌いです」って返信が来るんですよ(笑)。普通、先輩から誘われたら嫌いなものでも我慢して食べるとか、多少あるじゃないですか。でも、彼は「肉がいいです」とか素直に言ってくるので、沖縄キャンプの時なんかもステーキハウスに連れて行ったりしました。ちなみに、坂倉(将吾)君なんかも、俺を怖がらずに接してきた選手のひとりだったりします。彼なんかは菊池君より若いから、それこそ僕の現役時代とか、そういうものにピンと来なかったりするんでしょう。逆に接しやすいのかもしれませんね。

 ちなみに、そういう食事の場では野球の話ばかりしてるようなイメージがあるかもしれませんが、例えば少人数で食べる時は、ほとんどくだらない話ばかりしてます。逆に、人数が多い時、やはり野球の話になりますね。そこではいろんな話をしています。

彼にはゆるキャラのような面があると思います

 あと、よく「バッティングについて指導したりしないんですか?」って聞かれることがあるのですが、それに関しては、まったくしません。なぜなら、監督やコーチのようにずっと彼のバッティングを見ているわけじゃないから。見ていれば言えることもあるでしょうが、少し見たくらいで言うのは、逆に失礼ですからね。

 ただ、彼のバッティングを見ていて思うのは、変な話かもしれませんが、思ったよりも、悪いところが目につかない子なんですよ。でも、なんでここで振らない? なんでここで振る? そういうのはあります。だから、見ながら「山かけか?(球種に山を張っている?)」と思ったりはしますね。球種に山かけ、カウントに山かけ、みたいな。なんと言えばいいのか、感覚で打ってるような感じがあるからこそ、逆に悪いところが目立たないんです。単に、調子の悪い時はいい球に手を出さず悪い球に手を出す。いい時はその逆。それだけ、みたいな。

 彼の場合はスイングとかフォームとか、そういう部分じゃないんですよね。言うなれば野性的。それはファンの方も感じている部分じゃないでしょうか。たとえば他の選手が打てないと「なんで打たないんだ!」って思うけど、菊池君の場合は「まあ、いっか」。そう思えたりする不思議な部分があるんです。つねに打つ3割バッターではない。かといって意外性のバッターでもない。その中間のような。変な言い方かもしれませんが、彼にはゆるキャラのような面があると思います。元気だし明るいし、うん、まあ打てなくても許すか、みたいな。僕に馴れ馴れしく接してきても、不思議と腹が立たない。それが彼の魅力、人間性なんだと思うのです。

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