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「後半は絶対に巻き返す」中日・京田陽太が二軍生活で得た“初めての感情”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/31
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二軍で得た新しい刺激と初めての感情

 さらに二軍では刺激も加わった。

「藤井(淳志)さん、大野(奨太)さん、遠藤(一星)さんの姿です。ベテランの皆さんほど練習しますし、ベンチで大きな声を出している。僕ももっと頑張らないといけないなと思いました」

 6月6日。ナゴヤ球場のウエスタンリーグ中日対阪神11回戦。13対3と10点ビハインドの9回表。すでに京田はベンチに退いていた。勝敗が決した炎天下の無観客試合。6番手のルーキー上田洸太朗が無失点で抑えると、京田は「ナイスピッチ! ここから!」と真っ先にベンチを飛び出し、手を叩いて出迎えた。「若い選手が守っていましたし、あの時に僕ができることがそれでした」と振り返る。ベテランに加え、才能に満ち溢れる若者の存在も大きかった。

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「フリーバッティングはずっと(石川)昂弥と同じ組でした。僕がいくら飛ばす意識で打っても、昂弥にはかなわない。打球音、角度、飛距離、全て別格です。あれで高卒2年目なんてあり得ないですよ」

 朝は早く、環境は劣る。メディアの扱いは小さく、活躍しても一銭にもならない。それが二軍だ。しかし、京田は全く苦にならなかった。情報を断捨離し、シンプルな意識で課題に向き合い、真摯なベテラン、必死な若手、懸命な怪我人に刺激を受け、体の芯から汗をかく。プロ入り後、京田に初めての感情が湧いてきた。

「野球が……楽しかったです」

 6月29日に一軍登録。そして、7月14日。マツダスタジアムの広島対中日14回戦の第4打席。前半戦の最終打席で今までにない手応えがあった。

「森下(暢仁)のインコースの厳しいカットボールでした。うまく左肩が残って、バットの面を使って、反応でセンター前に返せたんです。今までなら、へっぴり腰で凡退していたと思います」

 今はオリンピックでシーズンが中断している。これも初だ。

「やってきたことを継続します。ファームの1か月は野球が楽しかったですが、本当に心から楽しかったと言えるのは1年間通して結果を出してからだと思います。前半はピッチャーが頑張っていたのに、たくさん足を引っ張りました。後半は絶対に巻き返します」

 次はどんな初めてが待っているのか。戦いの再開までしばらく牙を研ぐ。

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