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荻野貴司と小窪哲也の「荻窪コンビ」 “塾通いの幽霊部員”と“奈良のスター”がロッテで再会するまで

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/09/14
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初めて一緒にスタメンに名を連ねた日

 プロ入り後は交流戦などでグラウンドにて会った時に会話をしたり、連絡を取り合う程度だったが時は流れ、同じチームとなる。昨年、カープを退団した小窪はNPB復帰を目指して今年6月から独立リーグの九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズに所属。8月31日にマリーンズ入りが発表された。デビューは9月9日のバファローズとの神戸での首位攻防戦。一軍昇格するやすぐに出番がまわってきた。1番荻野、2番小窪。子供の時に近所の広場で一緒に新聞紙をまるめて作ったボールを使って遊んでいた2人は36歳を迎える歳に初めて一緒にスタメンに名を連ねる。

 2点ビハインドの7回に小窪がバファローズ先発の田嶋のストレートを捉え左翼へ1号本塁打。NPB復帰後移籍初ヒットは劇的なアーチとなった。これで1点差。そして迎えた9回先頭打者で荻野が打席に入る。

「打ったのはフォーク。狙ってはいなかったのですが、身体が反応して打ちました。そこまで当たりはよくなくて微妙な感覚ではあったのですが風に乗ってくれましたね」と言う打球はレフトスタンドに消えていった。負ければ首位陥落だっただけに価値ある一発。「荻窪コンビ」で土俵際から踏ん張った。

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 この試合のことを小窪は「とにかく目の前のことに必死でした。味わう余裕まではなかったですけど、一緒のチームで試合に出てプレーが出来て感慨深いものはあります」と話すと、荻野は「いきなりスタメンで結果を残したのは凄い」と称えた。ちなみに荻野は小窪の事を「てっちゃん」と呼ぶ。そしてこの試合のことを「不思議な感じだった。一緒に1、2番を組んでいても実感がわかないというか、本当なのかなあと思ってしまった。それくらい不思議。ただ、これからも一緒にプレーを出来る。頼もしいし、楽しみ」と目を輝かせた。

 千葉ロッテマリーンズは現在、首位を快走中である。リーグ1位でのリーグ優勝は1974年以来。ただし、1974年は前後期制なので、前後期制を除くと1970年以来の快挙となる。優勝マジック点灯も間近だ。そんな偉業達成に大事なのはベテランの存在。1番打者としてチームを引っ張る荻野。そしてカープ時代に3連覇に貢献し、その後は独立リーグも経験するなど酸いも甘いも知る経験豊富な小窪。優勝に向けて大事なシーズン終盤戦。「荻窪コンビ」がマリーンズを支え、引っ張る。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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