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背番号60から放たれる来季覚醒の匂い。中日・岡林勇希が竜のスターへ駆け上がる

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/06
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衝撃的だった広島・鈴木誠也のグランドスラム

 プロ初の猛打賞を放った10月7日の広島戦(バンテリンD)。今年、一番印象に残っているシーンがあった。0-0の5回。1死満塁で中日のエース・大野雄大投手から、広島の4番・鈴木誠也外野手がバックスクリーン横へ特大の満塁弾をたたき込んだ。脳裏に焼き付いたのは、金メダルを獲得した日本の4番の“対応力”だった。

「大野さんが2球で追い込んで1-2からの4球目。確か、あのホームランを打ったときノーステップだったんです。とっさの判断で打ち方を変え、しかもグランドスラム。勝負強い。ホームランがすごいというより、大野さんという球界屈指の投手をどう打つのかを常に考え、行動を起こせることがすごい」

 右翼の守備についていた岡林は、1打席で起こった鈴木誠のとっさの判断にただただ驚いた。なお、同日の試合で鈴木誠がロジンでグラウンドに「60」とイタズラ書きしてくれたことには、「めちゃめちゃうれしかった。でも、どう返したらいいのか……」と、感激しつつも戸惑っていた。

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 尊敬する元マリナーズ・イチローのように、走攻守3拍子そろったスーパースターを目指している。でも、まずは等身大の自分を受け入れる。今オフも誰かに弟子入りするつもりはない。

「まだ何もない僕が、誰かのところでトレーニングしてもきっと難しい。まずはしっかりと基礎、土台を作りたい」

 2月のキャンプ前に78キロだった体重は、フェニックスが終わって73キロまで落ちた。今年も秋季キャンプが終われば、名古屋にあるトレーニングジム「BCプロジェクト」に通い、来年2月のキャンプまでには、現在の体型を維持しつつ80キロにビルドアップする狙いを持ってる。

二塁挑戦への偽らざる本音

 だがその前に秋季キャンプだ。4日から始まった“地獄の秋”には、「技術、スタミナ、打撃。全てにおいてレベルアップ」という目標を立てた。さらには、内野用のグラブを持ち二塁へ挑戦することになった。

「二塁に行くことでチャンスが増えるのは、僕にとっていいこと。楽しみなんですよね」。実は内野をやるのは初めて……ではない。中学時代に二遊間を守ったこともある。さらに、中日から指名された19年のドラフト前には11球団から調査書が届いたが、ある球団からは、高校時代、投手か外野だったにも関わらず「是非、ショートで獲りたい」と言われたこともあった。しかし、岡林には不安もある。「どちらも中途半端になってしまうのが怖い」。その恐怖に打ち勝つため、がむしゃらに練習へ打ち込む。

 5日の練習後には、初の長時間ノックに「外野とは違う動きで、下半身が張っている。一つ、一つ技術を高めたい」と話した。荒木雅博内野守備走塁コーチも「体の使い方でいいところはある。一番意識させたいのは足の使い方。それが全てのことに生きてくる」と、“特訓”を楽しみにしている。

 今春のキャンプでは、立浪新監督が臨時コーチを務め、その実力を高く評価された。NPBで1位の通算487二塁打を誇るミスタードラゴンズから、多くのことを吸収した。今度は監督と選手として、同じリーグ優勝、日本一を目標に戦う。取ってみたいタイトルは、トップバッターでの首位打者だ。

 来季3年目の若竜は、こう未来像を描く。

「線が細いってみんなに言われるが、大きくしすぎて自分の持ち味が減らないようにしたい。143試合戦うには今の体、スタミナじゃ物足りない。ホームラン打つ打者ではないし、立浪さんがよく打っていた二塁打というのが大事になる。ちょこちょこするのも大事だが、しっかり長打が打てる打者は怖いと思う。打っていい場面では打てるような体の大きさは作りたい」

 最後にこんな質問をした。「岡林勇希のプロ野球人生で、今は何合目?」

「まだ2合目も行ってない。いきなり5、6合目までにはいけないので、目の前の課題を一つずつクリアしていきたい。でも、スピードは全速力で!」

 2022年の岡林勇希、大ブレイクの予感がぷんぷんする。

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