こんにちは、FPM中嶋です。“野球レコード収集家”を自称し、古今の野球レコードを闇雲にコレクションし、それら野球音源のみをひたすらかけまくるイベント「プロ野球 音の球宴」を主宰する“日ハム馬鹿(えのきど監督命名)”です。また、出てきました。
11月の上旬、離れて暮らす母から電話がありまして。80歳を超えて一人暮らしをしている母。年齢が年齢だけに、母からの着信にはいつも軽い緊張感を抱いてしまいます。恐る恐る電話に出てみると……。
「ほら、あんたの好きな日本ハムの、なにジョーだっけ? あーそうそうシンジョウさんね、監督だって? 会見見たわよ、着てる服すっごかったわねー、わはは!」
普段プロ野球にまったく興味がない私の年老いた母にも、しっかり刺さった新庄剛志監督、もとい、ビッグボス就任会見。これ以降、連日地上波のテレビで新庄ビッグボス(以下、新庄BBと表記。B☆Bに非ず。ちなみに北海道移転と同時に誕生したマスコット“ブリスキー・ザ・ベアー”ことB☆Bは「みらい大志」として北海道の地域貢献のため、今も道内の市町村を奔走中)の姿を見ない日はないという状態が続き、今シーズンに終始漂っていた暗いムードを一掃したばかりか新たなファン獲得の可能性まで見えた訳で、あの日の会見は大成功だったと思います。
これで“過去に音盤をリリースした実績のあるファイターズ監督”がまたひとり増えた!
と、ここから先、普通の野球コラムならば「彼の現役時代の思い出」とか「来シーズンの新庄BBへの期待または不安」などへと展開するわけですけれども、あいにく私は野球レコード収集家。就任の報道を受けて真っ先に頭に浮かんだのは「これで“過去に音盤をリリースした実績のあるファイターズ監督”がまたひとり増えた!」でした。
私が収集している野球レコードの中でも主要なポジションを占めるのが“選手の歌モノ”です。音楽産業が隆盛を誇っていた時代、プロの歌手以外の時の有名人が音盤をリリースする、というのは割と普通にあったことでした。時期的にプロ野球がナショナルパスタイムだった時代とも重なっていたので、球界で目覚ましい活躍をすれば即レコーディング→歌手デビュー、といった例は多かったのです。
新庄BBの歌手デビューは阪神タイガースの若手の注目株として亀山努とともに“亀新コンビ”と称され人気を博していた頃の1994年3月。当時のCDシングルの定番だった8cmCD、“短冊CD” 仕様でした。タイトルは『第Ⅱ章~True Love~ C/W 最後に笑えたらいいね』。ライター陣が豪華です。
作詞は2曲ともに、フジテレビ『笑っていいとも!』のオープニングテーマ『ウキウキWATCHING』やばんばひろふみの大ヒット曲『SACHIKO』の作詞で知られる小泉長一郎です。『第Ⅱ章~True Love~』の作曲は“Darie”名義で『ダリエ百葉窓』など多数のソロアルバムを発表するほか、NHK教育テレビ(現Eテレ)『いないいないばあっ!』の音楽や『ママレード♥ボーイ』などテレビアニメ主題歌も多数手掛けているシンガーソングライターの濱田理恵。イントロのサックスから“メロウでアーバンな大人の夜”感が漂う、洗練されたAORサウンドに仕上がっています。歌詞も、まるでトレンディドラマのような恋愛模様を描いており、恐らく新庄BBは歌入れの時には『ケアレス・ウィスパー』を歌うジョージ・マイケルになり切っていたのではないかと想像してしまいます。
カップリングの『最後に笑えたらいいね』は、『ピタゴラスイッチ』でおなじみ栗コーダーカルテットの栗原正己作曲。こちらは一転して、ハッピーでゴキゲンな祝福ムードに満ちた16ビートのナンバー。この曲の聴きどころは大サビパートで新庄BBのヴォーカルを追いかける形で鳴り響くピッコロトランペット。この楽器がどんな音色かというと、ザ・ビートルズ『ペニー・レイン』の間奏のトランペットソロ、あれです。これがまた、この曲の祝福ムードを演出しています。肝心の新庄BBの歌唱ですが、しっかり音程を保っていてリズム感も悪くなく、“選手の歌モノ”としては上出来の部類だと思います。って、偉そうですみません。