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ヤクルトの“控えめな男”松本直樹28歳が、ブレイクするために三輪広報が考える“秘策”

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/21
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2試合連続ホームランでチャンスを摑む

 そんな松本直樹も5年目。29歳のシーズンを迎えています。今年は開幕からベンチ入り。4月6日の中日戦では、あの日以来の決勝打となるプロ入り2号2ランホームランを放つと、翌7日にも2ランと2戦連発のド派手な活躍。

 今回の松山遠征では13日の対広島戦で先発マスク。僕が「つば九郎空中くるりんぱ」の撮影準備に追われていた5回裏、三遊間を破るヒットを打ち、観客から大きな拍手を受けたのを見て、少し安心しました。

 今年は中村悠平の離脱の影響もあるかもしれませんが、開幕1軍を勝ち取った松本直樹。キャッチャーとしては捕球してからのスローイングの速さや、肩の強さ、キャッチングの上手さは、常にレギュラー争いに割っていってしかるべきだと思っています。

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 ただもう28歳、そろそろしっかりとした結果を出さないと、どっちに転んでもおかしくない年齢になっています。僕は野手でキャッチャーの生き残り方はあまりわからないけど、少ないチャンスでも、「その試合を任せておけば大丈夫」というような、首脳陣の信頼を得られる捕手にならなければ、厳しいと思うんです。ただでさえポジションが1つの捕手、今は先発の高梨裕稔と組んでの出場に限られていますが、「ここが人生の分岐点」と思ってやってほしいんです。

4月6日中日戦 松本直樹(中央)、高梨裕稔(右)とつば九郎

松本少年がサインを貰いにきた真意を約15年ぶりにただす

 今回の記事を書くにあたって、思い切って松本直樹が僕にサインを貰った理由をLINEで尋ねました。

三輪「小6のとき、なぜ俺にサインを求めたのか忖度抜きで教えて!?」

松本直樹「忖度抜きで言うと、たまたま香川オリーブガイナーズの試合を見に行ったんです。そのとき『あれがプロ野球選手になる人だよ』って人に教えてもらって。『プ、プロ野球選手!?』と思って、そのとき被っていた野球帽に書いてもらいました。よく考えたらまだ三輪さん、ドラフトにかかるかどうかはわからなかったのに、それにふさわしいくらい結果を残していて、輝いて見えました。まさかその人と将来チームメートになるなんて考えもしなかったです」

三輪「じゃぁ、なぜプロ入りして半年も経ってから、それを俺に言ってきたの?」

松本直樹「最初の挨拶で、がめつく言ったら引かれるかなと思って……」

控えめな性格の男、改造計画

 実に、松本直樹の控えめな性格がよく現れています。進学校である丸亀高校を出て、一般入試、かつ現役で立教大学に入学。しかし、野球部ではレギュラー捕手ではなく、神宮で4年間1本もヒットを打てなかったという「控えめすぎる成績」。その後、社会人・西濃運輸で才能が開花した遅咲きで、プロ入り後、山崎晃大朗らと行った潮干狩りでは、僕の娘の面倒をよく見てくれた優しい男。しかし、プロに入って「優しく」「控えめ」では何もいいことはありません。

 決勝2ラン&好リードで初めて立った神宮のお立ち台。「ぼ、僕はリードでも何もしていません」と発し、インタビュアーを「そんなことはありませんよ!」と困惑させたマイクさばき。「これからもがんばります、ょろしくお願ふぁす!」と最後に噛んでしまってはもったいない。

 次にお立ち台に上がったときは期待していてください。見違えるほどのトークスキルを。サインを最初に書いた先輩として、責任を持って鍛えます。松本直樹が子供たちにサインをたくさん求められるような、輝く選手となるように。

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