昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/05/14

「ウォシュレットのない世界にはもう戻れない」

 日本球界でプレーする外国人選手にインタビューをした際、「日本に来て、生活面で驚いたことは?」という質問を投げかけると、必ずといっていいほど、「街全体が清潔であること、治安が素晴らしくいいこと、ウォシュレットの存在」という答えが返ってくる。

 日本で長年プレーし、活躍した元広島カープのブラッド・エルドレッド、クリス・ジョンソン、元阪神タイガースのランディ・メッセンジャーも口を揃えるかのように「日本に来るまでウォシュレットを見たことがなかったからびっくりした。すぐに虜になったよね。感動したよ。ナイスすぎるよ、日本のトイレは。グレートだ」と大絶賛。「一度この良さを知ってしまったら、ウォシュレットのない世界にはもう戻れない。アメリカの自宅のトイレにもウォシュレットがつけられるように工事をしたんだ」と、帰国後の温水洗浄便座生活を手に入れた喜びを語っていた。

「日本ハムがアリゾナでキャンプを張った際の最大の問題はウォシュレットがなかったことだったそうだね」と切り出したエルドレッドが「でもそれはよくわかる。ウォシュレットの良さを知ってしまった人間にとっては切実すぎる問題だ。特に痔を患っている人にとっては大問題だ。ウォシュレットは日本から海外への選手流出阻止に一役買っているんじゃないかと思う時さえある」と、真面目顔で話していたのが忘れられない。

 そして、外国人選手と温水洗浄便座の話になると、セットで必ず話題になるのが「和式トイレ」の存在だ。

 当時、来日6年目に突入していたエルドレッドは「初めて遭遇した時はびっくりした」と、まるで宇宙人と会ってしまったかのような面持ちで和式トイレとの奮闘話を語ってくれた。

「『これはいったいどうやって使うんだ!? どっち向きに座るんだ!?』とパニックになったよね。実はいまだに正しい使い方がわかってなくて、ずっと避けてるんだけど、地方球場では和式トイレしかないケースがあってね。仕方なく何度か使う羽目になったんだけど、足は痛くなるし、服は全部脱ぎたくなるわでもう大変で……。だから地方遠征に行く時には、球場に洋式のトイレがあるのかがすごく気になって、真っ先にチェックしてしまうんだ。温水洗浄便座という世界でも最先端ともいえる高機能トイレがこれだけ普及してる日本で、和式トイレという真逆ともいえるトイレが混在してる。実に奥が深いなと思ったよ」

 そんな助っ人外国人たちのトイレ話を聞いて以来、新外国人選手が入団するとついつい気になってしまう。

(今年巨人に加入したポランコとウォーカーも和式トイレと遭遇し、パニックになったのだろうか。やむを得ず使う羽目になって、すでに奮闘済みなのだろうか。そして、温水洗浄便座の存在と日本での普及率にびっくりしたかな。使い心地に感動したかな。『ナイスすぎるよ、日本のトイレは!』なんて言いながらウォシュレットの沼にハマってるのかな)

「どこにいってもウォシュレットと出会える日本で1年でも長くプレーしたい! この国でしっかり稼いでトイレにもちゃんと電源がある豪邸を母国で建てたい! 永遠のウォシュレットライフを手に入れたい! そのためにも活躍するんだ!」

 日本が誇るハイテクトイレの存在が、高いモチベーションを生む一因になっていたなら嬉しい限りだ。

ポランコとウォーカー

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2022」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/54103 でHITボタンを押してください。

この記事の写真(1枚)

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
z