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広澤でもペタジーニでもなく…ヤクルト史上最高の一塁手はホセ・オスナである理由

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/25
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世界中の一塁手が狙いたい「あのプレー」成立の4条件

 あのプレーの何が凄いって、あのプレー自体は世界中の一塁手が狙いたいプレーではあるんです。

 でも、実際にはほとんどアウトにはできないし、ならない。

 なぜか。

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 僕は、あのプレーを成立させるためには、4つの条件が重ならないといけないと思っています。

その1【絶対にセーフのタイミングで、適度な速さの牽制球】

 例えば、山なりの牽制球だとランナーもゆっくりな帰塁になるので隙ができにくい。

 逆に速すぎる牽制球だと、その牽制球自体でアウトになるかという勝負になるので、悪送球にでもならない限り、すぐにランナーが立ち上がるという流れにはならない。

 ランナーも一塁ベースに手を置きながら「危なかったー」と思い、警戒感が強まるからです。

 そういう意味で、遅すぎず速すぎずな適度な速度でないといけないと思います。

その2【ランナーとの適度な距離感】

 オスナが凄いのは、ランナーの視界から実にタイミングよく足をスッと消す事でランナーにベースから離れたんだと無意識に安心させ、油断させている事なんです。

その3【リズム感】

 これがかなり難しい。

 あの場面、オスナはボールを捕球した後ベースから実にリズムよく離れます。この【リズム】というのがすごく大事だと思うんです。

 牽制球の速度に合ったリズム感で、しかも淀みなく一塁手の「捕球・離塁・追いタッチ」の3つのリズムと、ランナーの「ヘッドスライディング帰塁・立ち上がる・足でベースを踏む」のリズムが「ズン・チャッ・チャッ」という感じで合わないといけない。

 これが一つでもズレると、前の2条件をクリアしたとてもアウトにする事はできないのです。

 そして最後。

その4【常にアウトを狙い続ける貪欲さと忍耐力と適当力】

 これが一番難しい。

 オスナはあの日だけでなく、ファーストに入ってから常にあのプレーを狙っていました。

 そのトライアンドエラーを誰よりも幾度となく繰り返して来た事が凄いんです。

 オスナはどんな牽制球が来ても捕球後にランナーの動きを絶対に観察していました。

 そこに少しでも隙がないか、貪欲にチェックしてきたんです。

オスナは去年から虎視眈々と狙っていた

 去年の日本シリーズでも狙ってるシーンが度々ありました。

 こうして文字にすると、これをずっと狙い続けるのはとても神経を使うような感じもしますが、実際は「これでアウト取れたらチームも盛り上がるし、面白いじゃん」という軽いノリみたいなものを少し持ってないと、狙い続けられないんじゃないかと思います。

 この4条件をすべてクリアしているオスナは、本当に凄いんです。

 実は6月9日のオリックス戦の8回、一塁ランナー小田選手で同じような場面があったのですが、球審の白井さんがリクエストを拒否したので検証もされず、アウトにはならなかったんです。

 個人的にあのリクエスト拒否は「なんでやねん!」な気持ちが強かったので、その3日後にあのプレーが決まった時は思わず「白井さん、ちゃんと見てるかー!」と声に出してしまいました。

 なので、オスナは今シーズンだけで実質2回、あのプレーを成立させているんです。

 これ、ホントに凄い事だと思います。

 こんな観ていてワクワクする一塁手、僕は知りません。

 というわけで、僕が思う「ヤクルト歴代最強の一塁手」は、ホセ・オスナだという事をここに宣言します!

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