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「クビが頭をよぎりました」 中日・山本拓実が辿り着いた“負のスパイラル”から抜け出す答え

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/26
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谷元圭介から学んだ大切なこと

 さらに宮古島では大きな収穫があった。

「谷元さんです。あんなに楽しそうに野球をする人を初めて見ました。自主トレをお願いした時は身構えていたんです。何年もプロで活躍されている職人みたいな先輩なので、きっと難しい技術論があるはずだから、それが理解できるかなと。確かに背格好が似ているので、技術の話もたくさんありましたが、何より楽しく練習する姿が印象的でした」

 野球が好き。好きだから、楽しい。楽しむために、うまくなりたい。うまくなるために、練習する。そのサイクルで躍動するベテランは少年のようにキラキラしていた。9歳の冬、サンタクロースへ拓実少年はプレゼントにブルペンを頼んだ。野球が大好きで、うまくなりたい一心だった。山本は先ほどの答えに一文を加えた。「野球を楽しむべし」と。今は中継ぎとして毎試合準備している。

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「試合前練習のキャッチボール中にその日の体調が分かります。今は悪くても動揺しません。『はいはい、今日はこのパターンね』と自覚して、その状態でどうベストを出すかを考えています。直前のブルペンや試合のマウンドで体調が変わることもありますが、とにかくバッターを攻める気持ちを忘れずにいます。毎日、楽しいです」

 4月24日の巨人戦では2回パーフェクトで今季初勝利。5月11日のヤクルト戦ではプロ初ホールドを記録。「目標は50試合登板と二桁ホールド。札幌遠征の時に谷元さんに提案されました」と語る。そして、過去4年間を振り返った。

「そうですね。去年までは……中日ドラゴンズ大学に通っていたという感覚です。情報収集して、試して、研究して、全て取り入れました。これは無駄ではなく、今でも役立っていることはあります。でも、たくさんエラーもありました。大事なのはいかに選ぶか。最終的に自分だけに合う『山本拓実理論』を作ることだと思います。これからも頑張ります」

 背番号59の“大卒ルーキー”は今日も攻める、楽しむ。

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