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 続いてジントシオが畳み掛けたのは、マリンでの試合開始前にオープニングテーマとしても流れていた超名曲「マリンに集う我ら」!

<♪千葉マリンに集う我らと 波の彼方 同じ夢を誓う>

「波」や「風」などマリンを連想させるフレーズがちりばめられているこの曲を聞くと、やはり思い浮かぶのは満員のライトスタンドが一斉にタオルを振り回しながら歌う光景だ。手元のおしぼりをブンブンと振り回さずにはいられない!

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 その後も渡辺正人の新旧応援歌2連発(渡辺正人はジンさんが電話番号を知っている数少ない選手で思い入れがあるらしい。笑)、今江敏晃、的場直樹などの応援歌原曲を熱唱しながら「マジで青春ですね」「懐かしい」と感慨にふけるジンさん。そして盛り上がりが最高潮に到達したのは、AKB48の「ファースト・ラビット」という曲を歌ったときだった。

 応援歌の原曲として使用されている曲はある程度把握していたつもりだったが、この曲はまったく知らなかったし、イントロを聞いても全然ピンと来ない。ところが、ジンさんがサビ前にキーを変え、メロディーを無視して力強くこう歌い出した瞬間、思わず鳥肌が立った……!

<♪ラララ…… 俺たちとこのチームでいつまでも 根元 今こそ見せてくれ……>

 まさかこれは……! ファンの間でも神曲として知られる根元俊一の応援歌じゃないか!

©野島慎一郎

 原曲のメロディーはまったく違うが、サビのコード進行が同じなため、違和感なく歌えてしまうという制作者だからこそ知る裏技。いてもたってもいられなくなった筆者は、ソーシャルディスタンスに配慮しながらもジンさんとともに熱唱。あまりにもエモい。

 酔いが回っているのもあるだろうが、感極まった表情で根元の応援歌を歌い上げるジンさんに向かって「♪俺たちとこのチームでいつまでも……」と叫んでいると、この応援歌がジントシオへのメッセージのようにも思えてきてしまった。ジンさん、やっぱりあなたはマリーンズの人だよ……。

応援歌はマリーンズの名場面のすべてとリンクしている

 ジンさんが応援歌を歌い上げるたびに、脳内で次々に浮かぶマリンでの美しい光景……。今回ジンさんとカラオケに来て改めて強く感じたのは、応援歌はマリーンズの歴史から切っても切れないし、名場面のすべてと繋がっているということだ。

 もちろん応援歌が鳴り響く球場よりも、球音が聴こえる現在のスタイルの方が好きだという人もいるだろう。でも思い出の名場面を思い出してみてほしい。2005年や2010年の日本一、福浦和也やサブローなどマリーンズを支え続けた選手の引退試合、劇的なサヨナラ勝ちの瞬間など、一人ひとりが思い浮かべる名場面は違うものだろうが、そのバックでは必ず応援歌が鳴り響いているのだ。

 だからこそ名シーンと応援歌はがっちりとリンクする。応援歌は選手を後押しする武器のひとつであり、ファンにとってマリーンズの名シーンを思い出させるための重要なトリガーにもなるのだ。

 それを思うと、やっぱり応援歌が聞こえないマリンはやっぱり寂しいし、将来大切なシーンを思い返しにくくなってしまっているような気がしてならない。やっぱりマリンには絶対に応援が必要なんだ。この後もデリック・メイやリック・ショート、垣内哲也などの応援歌原曲を歌い続けたジンさんを見て強くそう感じた。

 最後に、手拍子しかできないマリンでジントシオならどんな応援をするのか、尋ねてみた。

「楽天の応援プロデューサーを務めていた2年前にコロナ禍に突入してしまって、『音楽+手拍子』の掛け合いや、Zoomを使った応援など、できることをいろいろ模索したんですが、やっぱり声を出した応援に勝るものは作れませんでした。昔のように楽しかった応援はこのままもう戻ってこないかもしれないですけど、今できる範囲の中でできることを、また一から考えて作らなくちゃいけないですね」(ジントシオ)

 メガホン主体の応援を壊し、現在の応援のスタンダードを構築したジントシオ。そんな男がコロナ禍での応援を任されたのなら、いったいどんな応援スタイルを新しく作っていくんだろう。きっと想像もつかないような方法で、思い出のシーンとリンクする応援を築き上げるんだろうな。

 やっぱりまたマリーンズに何らかの形で戻ってきてくれないですかね、ジンさん。もう一度俺たちとこのチームで、いつまでも。

■カラオケ「ジントシオリサイタル」セットリスト

01 FLAG OF VICTORY(勝利の旗)
02 マリンに集う我ら
03 小さな幸せ / 加藤紀子(渡辺正人)
04 ピョンセン / UN(渡辺正人)
05 ワ / イ・ジョンヒョン(今江敏晃)
06 ファースト・ラビット / AKB48(根元俊一)
07 みなさんもご一緒に / AKB48(的場直樹)
08 千葉ジェッツの歌
09 For Boston / Dropkick Murphys(デリック・メイ)
10 SAGAMIHALA・LA・LA
11 MAKIN' MAGIC / LOW IQ 01(リック・ショート)
12 手紙 / Peach Jam(青野毅)
13 愛しておくれ / GOING STEADY(垣内哲也)
14 明日に向かって / HUNGRY DAYS(若手汎用テーマ)

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