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「僕はまだ150キロ以上の球を捕ったことがない」

 山浅にとって、2月1日からのキャンプは毎日が死にものぐるいの日々になる。ただでさえ「初めまして」のチームメートとともに、朝から晩まで一緒。さらに練習漬けとなる。正捕手・木下拓哉選手の壁は分厚く、ロッテから移籍した加藤匠馬選手の強肩は球界屈指。2軍には経験豊富な大野奨太選手やリハビリ中の石橋康太選手などが開幕1軍を目指して調整を行っている。

 ブルペンでは球界屈指の投手陣の球を受ける。大野雄大投手、柳裕也投手、小笠原慎之介投手、涌井秀章投手、高橋宏斗投手と挙げればきりがない。「緊張はすると思います。プロは想像以上のレベルだし、ドラゴンズはいい投手ばかり。僕はまだ150キロ以上の球を捕ったことがない。衝撃は受けると思いますが、1日でも早く慣れることが必要。持ち味の元気と声で、明るく盛り上げていきたい。自分から先輩の投手へ話しかけられるように。その積極性も大事だと思う」。この経験はきっと、山浅の財産になるだろう。

 高校生らしからぬ、バットへのこだわりもある。入団して間もないが、現在3種類のバットを試している。令和初の三冠王となったヤクルト・村上宗隆モデル、虎の主砲・大山悠輔モデル、そして今季から古巣・巨人に復帰した長野久義モデルの3本だ。新人合同自主トレが始まってから約2週間が経つが、高卒新人にありがちな「バット何本折りました……」というざんげはなく、「どれがいいか品定めしています。感触は大山さんのモデルがいいかな」。白色のグリップテープを自らバットへ巻き、より振り抜きがいいように工夫する。「守備だけやっていれば……なんていう甘い世界じゃない。球界のすごいピッチャーを打つために、たくさん練習したい」と意欲は十分だ。

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 高校時代には、インスタグラムに山浅の偽物も登場するほど。プロ入り後に、リアル山浅のアカウントも開設したがなかなかフォロワー数が伸びず、「偽物にフォロワー数、負けてます……」と取材後に笑わせてくれた。新人の中でもムードメーカー的存在になりつつある山浅。「不安なことしかないし、まだまだ力不足。できないことはできないと割切って、まずはできることで勝負していきたい。1日、1日が勝負」。伸びしろは無限大。名前にある龍のごとく、伸びやかに成長してほしい。

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