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本大会が始まっても、府中の人々は彼らを見捨てない

 JPアセット証券戦は終盤、試合が壊れオーストラリア代表の大敗(1対7)に終わる。リリーフ投手のトッド・バンスティーンセルが四球を出しちゃ痛打を食らった。だけど、府中の観客は最後まで応援の拍手を続けた。試合が終わって両軍揃って記念写真を撮ったのだが、ダリル・ジョージ、アレックス・ホールら中心選手の表情は明るかった。日本の社会人チームに敗れているようじゃWBC1次ラウンドはきついと思うのだが、ビッグチャレンジを前にあくまで彼らはポジティブだ。

大乱調、トッド・バンスティーンセル投手 ©えのきどいちろう
ボードは縦書き ©えのきどいちろう

 すごく府中の街に似合ってると思った。僕の学生時代の友達を繭(まゆ)のようにくるんで守ってくれた府中の街が、ビッグチャレンジを控えたラーメン好きの野球チームを支えている。本大会が始まっても、府中の人々は彼らを見捨てない。きっと侍ジャパン戦でもほんのちょっとは(?)応援してくれるだろう。


追記 侍ジャパンは強化試合に大谷翔平が加わり、いよいよ大会ムードが盛り上がってきた。僕がこれを書いているのは3月7日夜、京セラドームで阪神戦、オリックス戦を消化し、本番に突入するばかりのタイミングだ。野球ファンのハートを射抜いたのは阪神戦の大谷の2打席連続ホームランだ。ヒザを着いてセンターに叩き込んだ1発目、バットを折って詰まりながら運んだ2発目、まさに規格外のものを見た。

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 それがどんな衝撃だったかは去年のパ・リーグ本塁打王、山川穂高が「マジで野球やめたいです。あんなの競技が違う」、解説で入った西岡剛氏が「なんか強化試合とかそういうのを超えて、野球大好きになってしまった。帰ったら素振りするわ」とコメントしたことで知れる。

 だけどいちばん感じ入ったのは、あの2発を見て「普通かな」と嘯(うそぶ)き、ここは大谷がケガをした球場だと語った栗山監督が見てるものの独特さだ。6年前、2017年の第4回WBCのとき、大谷は右足首故障で出場できるかできないか瀬戸際のところにいた。で、最終的には肉離れをやってオジャンになるんだよ。あの目のくらむような2発を見て、そんなことをしみじみ考える人は栗山さんだけだ。栗山さんは栗山さんで、超弩級のスーパースター、大谷翔平を繭のようにくるんで守ってるものの存在を見ている。間違いなく。

 話のスケールがとんでもないからね、僕は府中のラーメン屋みたいな話が身の丈に合っていて、しっくりなじむんだけどね。WBCってすごいなと思うんだ。あいつらとこいつらが野球するんだよ。あいつらとこいつらが交錯するんだよ。

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