1ページ目から読む
2/2ページ目

自信に満ちたフルスイングになった中川

 たとえば中川圭太。大卒で入団した彼は1年目の2019年から111試合396打席を与えられ105安打で打率.288、3本、32打点。交流戦首位打者も獲得し一躍レギュラー格にのしあがった。

 だが2020年は極度のスランプに陥り二軍では大活躍するも一軍ではサッパリ。8月から監督代行に就任した中嶋監督に「二軍で無敵の中川を見てきたから」の名台詞と共にクリーンナップを任されるも45試合155打席でわずか21安打で打率.146、2本、13打点という無惨な成績に終わった。翌年も大きな期待を背負ったが61試合169打席を与えられ33安打。打率.212、1本、7打点。この2年間は当てにいく中途半端なスイングでポップフライ、内野ゴロが目立っていた。

 しかし2022年、中川は大きな進化を遂げる。110試合468打席120安打、打率.283、8本、51打点。前半戦から好調を維持していたが特筆すべきは後半戦。8月末以降の28試合で6本塁打をかっ飛ばし、これまでとは別人のような強力なフルスイングをするバッターへと進化していた。

ADVERTISEMENT

 過去2年間苦しみ抜いた姿を見てきた中川ファンにとってこの2022年の10月15日ファイナルステージ第4戦での劇的サヨナラタイムリー、そして中嶋監督とのあの抱擁シーンは涙無くしては見られない名シーンだと思う。そして2023年に入っても中川の自信に満ちたフルスイングは変わらない。46試合198打席で6本塁打、20打点。自身初の2桁本塁打どころか20本塁打も狙えるペースだ。僕たちは今、ついに不動のレギュラーになった中川圭太の姿を見ているのだと思う。

中川圭太 ©時事通信社

 確かにオリックス若手野手陣の成長は超スローペースだ。バーンと来ない。大きな怪我も多すぎる。でも日本プロ野球史に残る名将・中嶋監督に見守られ、今日も七転八倒しながら3歩進んでは2歩下がる姿を僕らに見せてくれている。全然エリートっぽくないしガッカリするプレーも多い。でもいつか大輪の花を咲かせてくれるはずなのだ。その過程を全て見届けたい。そう思えば無死満塁で初球を投ゴロゲッツー打ってもなんとか耐えられる。

 昔の人は良く言ったものです。「手がかかる子ほど可愛い」と。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2023」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/62663 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。