声出し・声援を止めないワケ
メンタルトレーナーの田口耕二氏の著書「今すぐ実践できる!高校野球メンタルトレーニング」(2022年、竹書房)では、メンタルトレーニングでのスキルをいくつか挙げている。
抜粋すると、
・リラクゼーションとサイキングアップ(心の高揚)
・プラス思考
・コミュニケーション
などがある。
高校球児の指導者向けの本だが、プロとも共通点はあるだろうし、何よりライオンズベンチからの声援は、これらにぴったり当てはまるのではないだろうか。
「師匠~!!」とちょっと変わった声がけをして緊張を和らげる。惜しくもファウルだった時は「調子いい証拠~!!」と前向きに切り替えさせる。タイムリーを決めた選手に「やま(山村選手)、ありがと~~!!」とお礼を叫んで、自分の気持ちを伝える……。(※これは6月25日に聞いた声である)
そもそも前述の「サイキングアップ」とは、メンタルトレーニングにおいて「自分自身やチーム全体を盛り上げる方法」を指すのだという。まさにこのことではないか。
「食べたもので体が造られ、聴いた話で心が作られ、発する言葉で未来が創られる」
田口氏が、同書の一番はじめに書いていた言葉である。
ベンチで選手が声を出し続けるのは、そしてファンがエールを送り続けるのは、言葉で未来を創り、拓くためなんじゃないだろうか。発する言葉ひとつひとつが、ライオンズが結束し、強くなるための土壌になっていくんじゃないだろうか。
パフォーマンスの低下や向上。試合の勝ち負け。そういうものを超えた意味が、応援にはあるのだと思う。だから今年、声出し応援の復活が決まった時、選手達は「嬉しい」「楽しみ」と言ってくれたのではないか。
私はオーキシンになりたい
豆苗を見守っていて気づいたことがある。窓際に置いておくと、日光が差す方角に葉と茎が伸びている。光をより多く取り込んで光合成をするためだと、理科の授業で習ったのを思い出す。
調べてみると、茎の先では「オーキシン」という成長ホルモンを作っているのだという。このオーキシンが、日の当たらない部分の成長を促し、より太陽の方に伸びようとさせる。だから豆苗は日光が差す方角に曲がっていくのだ。
ファームの選手達は、豆苗だ。仲間の声がけやファンからの励ましを受けて、オーキシンを作り出し、眩しいベルーナドームという舞台に向かって、ニョキニョキと伸びていく。一軍でチームの力になりたいと、強く強く想いながら。
そして私は、成長していく選手達のオーキシンになりたい。収穫後、また新しく伸びてきた豆苗達を見て、そう思った。
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