※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2023」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。
【出場者プロフィール】パニーニ暮野 埼玉西武ライオンズ 32歳。
岡田雅利捕手の復帰が待ち遠しいライオンズファン。最近はジョセフ選手がインスタに上げている食事アドバイスを参考にしている。開封の儀が楽しくてシークレットグッズを買いがち。
◆ ◆ ◆
ライオンズ二軍の選手たちの声出しが楽しい。
・ヒット一本だよ~!!(四球の時)
・見えてる~!!(ボール球を見極めた時)
・調子いい証拠~!!(大きなファウルの時)
・オーマイガーですよ!!(山野辺選手のホームランの時)
・雰囲気あるよ~!!/さぁ! 雰囲気の人~!!(古市捕手の打席で)
・師匠~!!(西川選手の打席で)
・良い豆だぁ~~!!(豆田投手が三者凡退で抑えた時)
6月10日、二軍本拠地のカーミニークフィールド(所沢市)を訪れた時、こんなユニークで楽しい声出しが聞こえてきた。ここでは現在、観客の大声での発声がNGのため、よく声が聞こえるのだ。
なぜ西川選手への声がけが「師匠~!!」なのかは不明だが、もしかしたら西川きよし師匠や西川のりお師匠由来かもしれない。同音の「市章~!!」の可能性もあるが、所沢市章はつる草の「野老(ところ)」の葉がモチーフらしく、西川選手とは関係なさそうである。
声出しはさながらボディービル大会のようで、「次はどんな声がけが出てくるのかな……」とワクワクする。
この日は3-10で大敗してしまったが、選手達は最後まで声を出し、「何か起きるかも」と思わせてくれた。
実際今季の二軍が好調なのは、やはり声がけが活発だからではないだろうか。
だが……
応援の効果について
「応援には私たちが思っているほどの効果はありません」
そんな記事を見つけてしまった。また、こんなことも書いてあった。
野球の打撃やゴルフのスイングなど、複雑な調整が必要な競技では、観衆がいることで高まった興奮がむしろ過緊張になり、パフォーマンスが下がる選手もいる、と。(参考: NEWSポストセブン「無観客試合続出 応援は成績に影響するか、データで徹底検証」2020.03.17)
そ、そんな……。にわかには受け入れ難い話である。
厳密に言えばベンチのチームメイトからの声がけと、ファンからの声がけでは違うのだろうが、どちらも「応援」的な要素があると言えるだろう。
でも、効果がないとしたなら、なぜ選手達は声がけをやめないのだろうか。何のためにファンや応援団は、エールを送るのだろうか。
豆苗に声がけして褒めてみる
私は、豆苗を褒めて育てることにした。
なぜ豆苗なのか。6月10日の試合で一番好きな声がけが、豆田投手への「良い豆だぁ~~!!」だったからである。
植物に声をかけるとよく育つ、という噂もよく聞く。ということは、豆苗に「良い豆だぁ~~!!」と声がけすれば、ぐんぐん成長して、美味しい豆苗になるのではないか?
そこで、豆苗を2パック用意し、下から8センチくらいの所でカット。片方には豆田投手の愛称の「豆ちゃん」と名付ける。そして「豆ちゃん」には背番号と同じ「124」回「良い豆だぁ~~!!」と声をかけ、その後の成長を比較する。
5日経ったところで、カットした部分(8センチ)よりも高く葉っぱが伸びている本数を目測で数えた。
声がけなし…86本
豆ちゃん…80本
どうした豆ちゃん。遅れをとっているじゃないか。
かつて辻前監督が言った「声出せば良いってもんじゃないぞ」の言葉が、頭を過ぎる。
124回はやりすぎだったか。でも、選手を後押しするのもまた応援の力だと思うから……!
私はもう一度124回声がけをし、応援ブーストを行った。今度は「わぁ~」「おぉ~」と感嘆の声を交え、より気持ちを込めてみた。
さらに3日後、8センチよりも高く成長した豆苗をピックアップして収穫。本数を数えると……
声がけなし…116本
豆ちゃん…122本
すごいぞ豆ちゃん。6本逆転している。応援ブーストが効いたのではないだろうか。さすがは内海コーチが「鍛え甲斐あるなぁ~!」と言った大器である(豆田投手が)。
さて、その味だ。素材の味を生かすため、塩だけで1分ササッと炒めて食べてみると……なんと、豆ちゃんの方が苦味が少なく、食べやすく感じた。
母にも食べてもらい感想を求めると、「え……どっちも同じだよ……」と言われたが、2つの豆苗を見守ってきた私が言うのである、間違いなく豆ちゃんの方が食べやすかった。やはり、応援には効果があったのだ。そう、間違いないのである。