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澤田圭佑の強さがマリーンズを変えてくれる予感

 そんな王者のDNAを継承する選手が後半戦失速気味のマリーンズの空気を一変させられるのかもしれない。この夏、彗星のようにマリーンズのブルペンに現れた澤田圭佑こそが、マリーンズの救世主として大車輪の活躍をする気がしてならないのだ。

ロッテに移籍した澤田圭佑

 澤田はかつてバファローズのリリーバーとして君臨し、マリーンズ打線もその勢いのある直球を打ちあぐねていた印象が強かった。

 ところが2022年はトミー・ジョン手術を受けて登板ゼロに終わると、オフにはまさかの戦力外通告。リハビリ中に戦力外通告を突きつけられるだなんてプロの世界は厳しすぎる。きっと谷底に突き落とされたような気分だろう。

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 しかしそこで救いの手を差し伸べたのがマリーンズだった。澤田は育成契約を結び、5月にイースタン・リーグで実戦復帰を果たすと、7月末に支配下登録を勝ち取って8月に一軍昇格。ここから澤田の置かれた環境は激変する。

 登板2試合目でいきなり勝利投手になると、4試合目にはホールドを記録。さらに5試合目となった8月22日のホークス戦でも3点リードの7回に登板してホールドを記録するなど、吉井監督の期待も加速度的に上がっていることがうかがえる。そのうちセーブのつく場面にも投げさせるんじゃないかと思えるほどだ。

 投げっぷりもいい。相手を威圧するかのような唸り声を上げながら、上から目一杯投げ込む150km超のストレート。要所では力の入った直球を続け、強引に抑え込むピッチングスタイルの投手は最高に気持ちがいいし、見ている方の心まで揺さぶるものがある。

 特に登板2試合目となったライオンズ戦で、その試合で本塁打を放っている中村剛也選手に全球直球勝負を挑み、空振り三振に切って取ったピッチングは痺れた。これぞ一度地獄から這い上がってきた男の魂を感じる投球だ。こんな球を投げられるピッチャーはなかなかいない。

 そして雰囲気も素晴らしい。澤田の少しぽっちゃりとした体型と浦和でのリハビリで真っ黒に日焼けした肌はマウンド上でのふてぶてしさを加速させ、威圧感に繋がっている気がする。それはまったくもって“オリ姫”たちが憧れるような雰囲気ではないだろうし、ピッチングスタイルだって澤田の魂を込めた泥臭い投球とシュッとしたイケメンによるスマートな投球とは対極だ。

 だが、澤田のマウンドでの堂々とした佇まいからはバファローズの選手たちと同じようなものを感じる。ピッチングから並々ならぬ自信が溢れているのだ。

 その自信が優勝を経験したことによるものなのか、苦しいリハビリをやり遂げたからなのかはわからない。でもこの自信の強さこそが今の澤田の強さになっているのは間違いないはず。じゃなきゃ、中村剛也に直球勝負なんてできないって!

 思えば前半戦に大声を張り上げて野手陣を鼓舞し、チームの好調を支えた大下誠一郎だってバファローズからの移籍組。澤田が活躍すればきっとその強さはブルペンに伝播する。終盤戦、疲れの見えてきた投手陣のカンフル剤となり、吉井監督が常々口にしてきた夏場以降の追い込みでフル回転してくれることを大いに期待したい。

 それにしても、やっぱり優勝はいいよなあ。優勝を経験して自信をつけたマリーンズの選手たちがどう変わるのか見てみたい。後半に失速したとはいえまだまだ貯金も十分残している今シーズン。なんとしても終盤に追い抜いてやりましょう!

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